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安倍第3次改造内閣と日本の原子力政策について

 8月3日、安倍第3次改造内閣が成立した。改造人事の目玉は、野田聖子氏の総務相就任と河野太郎氏の外相就任とのことである。安倍政権に期待するものは何もないが、新外相・河野太郎氏が以前より提起している日本における核燃料サイクルの問題は、考えるべきものである。

 そもそも日本の原子力政策は、原子力発電において排出される使用済み核燃料の処分とウランの有限性の観点から、「核燃料サイクル」の実現という基本線のもと、原発を稼働させることになっていた。

 核燃料サイクルとは、高速増殖炉サイクルとプルサーマルサイクルからなる。高速増殖炉サイクルとは、概略、以下のようなサイクルである。

  1. ウラン燃料を原発で燃焼させ発電する
  2. ウラン燃料を燃焼させると使用済み核燃料が排出される
  3. 使用済み核燃料を再処理工場において再処理し、プルトニウムを取り出すなどした燃料(MOX燃料)を製造する
  4. MOX燃料を高速増殖炉に投入し燃焼させ発電する
  5. 高速増殖炉においてMOX燃料を燃焼させると、さらにプルトニウムが取り出せる
  6. 取り出したプルトニウムを高速増殖炉に投入し発電する

 以上が高速増殖炉を用いた核燃料サイクルであり、日本の核燃料サイクルの核となっている。再処理工場としては青森県六ヶ所村に再処理工場があり、高速増殖炉としては「もんじゅ」が有名である。

 しかし高速増殖炉「もんじゅ」は長年完成することはなく、2016年にはついに廃炉が決定した。しかし原発を稼働させれば使用済み核燃料が排出されるのであり、現在、日本の原発は使用済み核燃料で溢れている状況にある。また海外の再処理工場に使用済み核燃料の再処理を委託しているが、高速増殖炉「もんじゅ」が操業しない以上、再処理をし取り出したプルトニウムの消費先はなく、日本の保有するプルトニウムは45トンにまで達する。北朝鮮が50キログラムのプルトニウムを保有し国際的な大問題となったことを考えると、日本の保有するプルトニウムがいかに大量が理解できるだろう。

 高速増殖炉サイクルの破綻を受けて、政府と電力会社は、プルサーマルサイクルを核燃料サイクルの主軸とし始めた。プルサーマルサイクルとは、概略、以下のとおりである。

  1. ウラン燃料を原発で燃焼させ発電する
  2. 排出された使用済み核燃料を再処理し、MOX燃料を製造する
  3. MOX燃料を通常の原発に投入し発電する

 このプルサーマルサイクルも実は前途多難である。そもそもMOX燃料は、使用済み核燃料を再処理し、プルトニウムと劣化ウランを混ぜ合わせて製造するため、政府と電力会社はプルトニウムの処理につながるというが、MOX燃料の内容比は、劣化ウランとプルトニウムの比率が9:1の割合となっており、プルトニウムの処理の切り札とはならない。

 そして一番の問題点は、どちらの核燃料サイクルにおいても、再処理の段階などで高レベル放射性廃棄物が排出されることにある。この高レベル放射性廃棄物の日本国内での処分先は、決まっていない。つまり、核燃料サイクルが実現しても本作で取り上げられた高レベル放射性廃棄物の保管・処分は不透明であり、その意味でも核燃料サイクルは成立していないといえる。

 2011年3月11日の東日本大震災と原発事故をうけて同年4月に日本で緊急公開され注目を集めた映画『100,000年後の安全』(マイケル・マドセン監督・脚本)は、フィンランド・オルキルオト島に建設中の放射性廃棄物保管・処分施設「オンカロ」を題材とし、その建設方法や処分計画と処分方法、そして処分完了後の施設のあり方を丹念に追いかけ、放射性廃棄物と人類との共存について問題を提起する内容となっている。

 本作を観ると、「オンカロ」の操業が絶対に成功するという保証はなく、高レベル放射性廃棄物の保管・処分は、まったく未知の領域にあるということが理解できる。

 「オンカロ」では、「この地は危険である」と様々な方法を用いて表示を行い、その上で10万年間地層に高レベル放射性廃棄物を保管するというが、そのようなことは可能なのだろうか。いまから10万年前の地球は、現代人の祖先がいよいよアフリカから各地に進出したという時代である。かりにそのころの人類が、「この地は危険である」と何らかのメッセージをいまの私たちに送っていたとして、私たちはそれを真剣に受け止めるだろうか。いや、そのメッセージを読み解くことができるだろうか、そもそもそのメッセージに気付くことがあるだろうか。高レベル放射性廃棄物の保管・処分について、人類はいまだ有効な方法を見つけていないということなのだ。

 東日本大震災では、三陸沖で大変な津波の被害があったが、歴史をふりかえると三陸沖ではたびたび巨大津波があり、そのつど「海岸近くに住んではいけない」と人々は教訓を残したが、それは生かされなかった。たかだか数十年数百年の時間の経過によって、教訓は忘れ去られてしまうのである。10万年後であれば、推して知るべしである。

 東日本大震災と原発事故から6年以上の月日が経ち、原発も再稼働が進みつつある。しかし核燃料サイクルや放射性廃棄物という観点から考えても、原発再稼働は無理がある。安倍政権は、日本の原子力政策の全面転換と原発の即時全面廃炉を進めるべきである。

(画像は、内閣改造に際し記者会見する河野太郎・新外相 時事ドットコムニュース 写真ニュースより)