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オーストラリアでのMV-22オスプレイの墜落事故について

 8月5日日本時間午後3時頃、米海兵隊所属MV-22オスプレイがオーストラリア東部沿岸に墜落した。乗員26人のうち23人が救助されたが、残る3人の行方は不明とのこと。米海兵隊が捜索を打ち切ったとの情報もある。引き続きの捜索・救助と乗員の無事を祈りたい。

 事故機のMV-22オスプレイは、キャンプ・ハンセン(沖縄県金武町)に拠点を置く在沖米海兵隊第31海兵遠征隊(31MEU)に所属し、普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)に駐機されている機体である。31MEUは1年のうち約6~8ヶ月はオーストラリアやタイなどアジア太平洋各国を巡回し、同盟国軍との共同訓練を行っている。今回の墜落事故もオーストラリアにおける共同訓練中の事故と見られる。

 そもそもV-22オスプレイ(海兵隊所属機の場合は、MV-22オスプレイ)は、ティルトローター式回転翼を有する垂直離着陸が可能な航空機だが、試作・配備にあたって重大事故を起こしたことから「未亡人量産機」とも揶揄された。その危険性と巨額の開発費用や開発の遅れにより米軍は開発・配備を中断したが、製造元の軍需産業の意向により復活したといわれている。つまりV-22オスプレイは軍事的要請に基づく航空機ではなく、「政治的兵器」ともいえる。このような危険な航空機を配備し、兵員を搭乗させた米国の罪は重い。

 現在建設中の辺野古新基地(沖縄県名護市)にもMV-22オスプレイの配備が予定されている。そして至近の北部訓練場(沖縄県東村・国頭村)ではMV-22オスプレイ用ヘリパッドが建設され、MV-22オスプレイを用いた演習が予想されているが、騒音や墜落の危険などにより、付近住民はじめ沖縄の人々の暮らしは大打撃を受ける。さらに猛烈な下降気流や高温の排熱により、北部訓練場が位置する「やんばるの森」が「干上がる」ともいわれ、希少生物にも深刻な負荷を与えることになる。

 日本政府は90年代には米軍によるV-22オスプレイ沖縄配備計画を把握していたが、ごく最近までそれを公表せず、隠し続けた。政府は辺野古新基地建設も北部訓練場ヘリパッド建設も「沖縄の基地負担軽減」とするが、「基地負担」そのものであるV-22オスプレイの配備を受け入れ、国民に公表しないといった姿勢を見れば、政府のいう「基地負担軽減」などデタラメそのものといえる。

 また「V-22オスプレイの沖縄配備は、尖閣諸島有事をはじめ中国の軍事的伸長への抑止力となる」といった議論が散見されるが、「中国脅威」論なるものがリアリティあるものかどうかは別の議論として、V-22オスプレイは機体が小さいため兵員を大量に運ぶことはできず、車輛を積み込むこともできないといわれている。V-22オスプレイの沖縄配備は「抑止力」にはつながらない。上述のように、31MEU自体が1年の半分近くを沖縄以外で訓練を行っていることを考えれば、そもそも在沖海兵隊そのものに「抑止力」が存在するのかどうか、考え直さねばならない。

 V-22オスプレイへの乗務という危険を強いられる米兵や、駐機・訓練実施により墜落・騒音といった危険性と基地負担を強いられる沖縄や各国の人々のためにも、日本政府はV-22オスプレイの配備撤回を行うべきである。

(画像は、オーストラリア東部沿岸で行方不明となった隊員の捜索を行う米艦船 時事ドットコムニュース 2017.8.6 21:05より)