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8月9日旧ソ連対日参戦の日を前にー日ロ両国による原則的かつ大胆な北方政策をー

 8月9旧ソ連による対日参戦の日を前に、花瑛塾は、ロシア政府に対し国際法違反の対日参戦とこれにより侵略した北方領土の返還を、日本政府に対し戦後の対ロ外交・対米外交の見直し、日ロシ平和・友好の確立を、そして北方地域に責任を有する国家として日ロ両国に対し国家に翻弄された北方領土元島民および北方先住民族アイヌの人々の権利擁護を求める。

 昭和20年8月9日、旧ソ連は日ソ中立条約の有効期間内にも関わらず対日参戦し、満州・朝鮮・南樺太・千島列島に進軍し、これを占拠した。爾来、72年の長きに渡り、不法に占拠されている。旧ソ連の対日参戦が国際法違反の侵略行為であることは明白であり、さらに戦闘において旧ソ連が行った殺人・強盗・放火・略奪など数々の蛮行・戦争犯罪、そしてその後の抑留と強制労働は許しがたく、厳しく糾弾する。

 日本は1951年に単独講和の道を選び、東側諸国との関係が悪化していたが、旧ソ連との領土返還・国交回復交渉が進展し、1956年に日ソ共同宣言を締結する。これにより日ソ国交は回復し、日本は国連に加盟し国際社会へ復帰した。その上で日ソの領土返還・国境画定交渉が進む予定であったが、難航し現在に至る。

 領土返還・国境画定交渉における日本政府の主張は、国後島・択捉島・色丹島・歯舞諸島の北方四島は、北海道の一部であるから返還せよという主張であったが、国後島・択捉島は実際には千島列島の一部であり、そのことは日本政府も認めている。そして日本政府はサンフランシスコ条約で千島列島の主権を放棄している。つまり日本政府の領土返還要求に根拠はなく、ロシア・旧ソ連が反発し領土返還・国境画定交渉が座礁したのも無理はない。

 領土返還・国境画定交渉が事実上破綻しているいま、日本とロシアは、以下の4つの点を確認することにより、新たなアプローチで北方問題に取り組む必要がある。

  1. 旧ソ連の対日参戦は国際法違反の侵略行為であり、これにもとづく領土占拠の無効。
  2. 旧ソ連の対日参戦は第2次世界大戦の連合国の基本方針である「領土不拡大」に反し、これを追認するサンフランシスコ条約の領土条項の無効。
  3. 過去の日本政府の不当な領土返還要求の撤回。
  4. 旧ソ連の対日参戦を教唆したのはアメリカであり、過去の領土返還・国境画定交渉に際し、陰に陽に介入をし続け、日ソ・日ロの友好を妨害し続けたのもアメリカであって、今後の日ロ交渉へのアメリカの干渉の排除。

 これらの点を踏まえた上で、国際法上もっとも適法であった状態、すなわち1945年8月8日の状態へ国境線をロールバックし、日本の主権を確認した上で、72年に渡る旧ソ連・ロシアの統治という歴史の重みを理解し、そこにおいて築かれた人々の暮らしや文化を尊重し、北方地域の現状を根底から覆すことのない、新たな領土返還・国境画定交渉のあり方を模索する必要がある。

 江戸幕府と帝政ロシアの日魯和親条約以来、樺太・千島交換条約やポーツマス条約と、国際法にのっとり国境線は幾度も変更された。従って日ロともに、いまにおいて国境線の変更をためらう理由はない。さらに日魯和親条約における樺太島雑居地化など、日本とロシアは柔軟な北方政策を展開した。こうした先人の知恵に学び、過去の経緯に固執して北方政策の歴史的本質を見失うことなく、日ロ関係を展開していく必要があるはずである。

 同時に、領土返還・国境画定交渉とは切り離した上で、北方領土元島民の故郷への自由な往来や交流、北方地域の先住民たるアイヌの人々の権利擁護を日ロ両国で支援するなど、国家に翻弄された元島民や先住民のために、北方地域に責任を持つ国家である日ロが連携して果たすべき役割は数多い。

 折しも、駐日ロシア連邦特命全権大使は、中国大使を務めた時代、中ソ国境交渉に従事し、国境画定を果たしたエフゲニー・アファナシエフ閣下である。日ロ交渉の進展は、けして「できない話」ではない。日ロ両国に原則的かつ大胆な北方政策の展開を求める。

(画像は、昨年7月サハリン・ユジノサハリンスク<北方領土・旧南樺太豊原市>における元島民日本人合同慰霊祭のNHK報道 花瑛塾塾長が祭員を務めた)