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緊迫する北朝鮮情勢と15年安保関連法を結びつける「希望の党」

 9月27日、小池百合子・東京都知事率いる「希望の党」が発足の記者会見を開催した。民進党は10月22日投開票の来たる総選挙で候補者の公認をせず、事実上「希望の党」への合流を目指すなど、総選挙に向けて「希望の党」の動向に注目が集まっている。

 小池都知事は27日夜、ニュース番組にて「希望の党」への参加条件として憲法改正と安全保障政策への姿勢を明言した。そして安全保障政策について、「いざという時、党内で右だ左だというのは正しくない」、「リアルな安全保障が必要」、「北朝鮮の危機が迫る中でどうするのか」などと発言した。

 さらに発足の記者会見において、「希望の党」へ参画した細野豪志氏は、安保法制について「白紙撤回では、北朝鮮の問題、わが国の厳しい安全保障環境に対応できない」、「既存の法制も認め、現実的な対応をしていく」などと語り、「希望の党」が憲法改正と安保政策を重視し、その上で2014年の限定的な集団的自衛権の行使を容認する憲法解釈の変更と、2015年に成立した一連の安全保障関連法を支持、これを推進していく立場が明確となった。

 しかしここで確認したいことは、15年の安保関連法は日本の防衛力を強化する法制度ではなく、まして北朝鮮の脅威や朝鮮半島有事に対応するものではないということである。

  安保関連法は、(1) 存立危機事態における限定的な集団的自衛権の行使、(2) 重要影響事態における米軍への支援、(3) PKOなど国際貢献の拡大の3つの柱からなる。

 (3)のPKOなど国際貢献の拡大については、既に南スーダンPKO自衛隊日報問題などでその問題性について指摘してきたことだが、これが日本の防衛力強化につながらないことはいうまでもない。

 それでは(1)の限定的な集団的自衛権の行使は日本の防衛力の強化につながるのだろうか。集団的自衛権とはいうまでもなく、他国が攻撃された場合、自国が攻撃されなくとも反撃するというものであり、防衛力とは関係がない。そして「限定的な集団的自衛権の行使」であり、内閣法制局・横畠裕介長官のいうとおり、これは従来個別的自衛権の範囲内であったものを集団的自衛権と「読み替え」たのであるから、実質的にはいままでの防衛体制に変更はないのである。

 (2)の重要影響事態における米軍の支援についても、日本の防衛力強化とは関係がない。そもそも安保関連法における重要影響事態法は、1999年に成立した朝鮮半島有事を念頭においた周辺事態法の改正法である。そして周辺事態法とは、日本の周辺における有事の際に米軍を支援する法律だが、重要影響事態法はこの周辺事態法における「日本周辺」という地理的制約を取り払ったものであり、中東やアフリカであろうが有事の際には世界中どこへでもかけつけ、米軍を支援するという内容である。世界中どこへでもかけつけ、米軍を支援することが日本の防衛力とどう関係があるのか不明であり、万一それが日本の防衛力を強化するものであっても、それは既に99年段階で周辺事態法というかたちで成立していた。

 このように考えると、安保関連法は日本の防衛力の強化とは関係がなく、さらにそれは朝鮮半島有事とは関係がないことがわかる。朝鮮半島有事あるいは北朝鮮による「脅威」は(その「脅威」が本当に存在するかどうかは別の議論として)、従前の個別的自衛権の範囲で、そして周辺事態法で対応可能なものであるのだ。

 小池百合子・都知事や細野豪志氏がこのことをどこまで承知しているのか、あるいは承知しながら安保関連法は必要と強弁しているのかはわからないが、「希望の党」の安保政策が陳腐きわまりないことは明白である。一時の新党ブームに流されることなく、落ち着いた投票行動を有権者に呼びかけたい。

(画像は25日に新党結成について臨時会見する小池都知事。共同通信提供。毎日新聞25日19:33提供記事より)