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平成29年11月12日 2017年史学会第115回大会

 2017年史学会第115回大会に参加しました。

 史学会は明治22年(1889)に創設された学術団体で、日本史、東洋史、西洋史など各方面の歴史家や学生などで構成され、歴史学の学術団体としては日本を代表する団体の一つです。歴史学の研究論文を中心とした学会誌『史学雑誌』の発行や、各方面の1年の研究成果を発表する年次大会の開催などを行っています。

 今大会は11月11日と12日に行われ、1日目は史学会賞の授賞式や公開シンポジウム「ロシア革命と20世紀」などが開催されました。シンポジウムでは和田春樹氏などロシア・ソ連研究の第一人者やヨーロッパ史や中国史の研究者などから報告がありました。

 2日目は古代史・中世史・近世史・近現代史からなる日本史部会、東洋史部会、西洋史部会の各部会の研究発表・報告が行われるとともに、各部会のシンポジウムなどが開催されました。

 特に日本史部会(近現代史部会)では、武藤三代平「駐露公使榎本武揚の情報活動と対外認識の形成」、アン・ジェイク「陸軍の日中戦争解決方案と日米諒解案の作成」、杉本弘幸「戦後失業対策事業・失対労働者における在日朝鮮人」など、現代の諸問題にも通じる研究発表・報告があった他、琉球・沖縄関連として草野泰宏「山県有朋の明治19年沖縄視察について」という発表・報告がありました。

 草野氏の発表・報告は、明治19年(1886)の山県有朋の沖縄視察について、視察に至る過程と政治的背景、そして視察の意義や山県の認識などを明らかにするものでした。従来、山県の沖縄視察について、琉球・沖縄におけるいわゆる「旧慣改革」の問題や対清外交の問題を背景と考えられてきましたが、草野氏はそれのみならずイギリスとロシアの緊張関係とそれが表面化した84年以降の巨文島事件を背景に、山県はじめ政府が対沖認識をあらためたとし、さらに従来軍事的側面からとらえられてきた山県の視察の意義について、内務大臣を務めていた山県による沖縄での殖産や教育整備の面にも光を当てました。

 また近現代史のシンポジウムとして「戦後史のなかの「国家神道」」と題し、山口輝臣氏、藤田大誠氏、昆野伸幸氏、須賀博志氏らによる報告などが行われました。村上重良「国家神道」論が提起されて以来、「国家神道」は様々な語られ方をされてきました。現在も島薗進氏がいわゆる広義の国家神道論を展開していますが、このシンポジウムではその「国家神道」というものの概念の歴史やこれまでの使われ方、議論の方向などを戦後の政治史や宗教史あるいは社会運動史、法制史などから見ていくものでした。