NHKドキュメンタリーETV特集「砂川事件 60年後の問いかけ」

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 16日、NHKドキュメンタリーETV特集「砂川事件 60年後の問いかけ」が放送された。

 砂川事件とは、砂川闘争と呼ばれるアメリカ軍立川飛行場の拡張工事をめぐる反対運動が盛り上がるなか、立川飛行場へ進入した学生ら7人が在日アメリカ軍基地への進入を取り締まる刑事特別法違反で起訴されたが、1959年、東京地裁が日本へのアメリカ軍駐留を憲法違反とし無罪を判決するものの(伊達判決)、同年、最高裁は「統治行為論」をもって日米安保条約についての違憲・合憲の憲法判断を避け、さらに日本国憲法における自衛権の問題に言及しつつアメリカ軍の駐留を合憲とし、審理を一審に差し戻したものである。

砂川闘争(立川市ホームページより)

 砂川事件の最高裁判決では、裁判所は日米安保条約など「高度の政治性を有するもの」については、「一見極めて明白に違憲無効であると認められない限りは、裁判所の司法審査権の範囲外」とし、日米安保条約の憲法判断を避け、他方、日本国憲法は自衛のための必要な措置は認めているとしつつ、憲法9条は「わが国がいわゆる戦力を保持し、自らその主体となってこれに指揮権、管理権を行使することにより、同条一項において永久に放棄することを定めたいわゆる侵略戦争を引き起こすがごときことのないようにするため」とし、「駐留軍隊は外国軍隊であって、わが国自体の戦力でないことはもちろん、これに対する指揮権、管理権は、すべてアメリカ合衆国に存し、わが国がその主体となってあたかも自国の軍隊に対すると同様の指揮権、管理権を有するものでないことが明らか」と解し、アメリカ軍の日本への駐留を合憲化した。

 このように最高裁が判決する以前より、つまりアメリカ軍駐留を違憲とする伊達判決以降、岸信介内閣が進める日米安保条約の改定(新安保条約)を念頭に、当時の藤山愛一郎外務大臣や田中耕太郎最高裁長官がマッカーサー駐日大使と接触し、政府の憲法解釈への自信を示し、また訴訟スケジュールをマッカーサーに伝え、マッカーサー大使が「伊達判決は覆るだろう」との手応えを得たことが公開された秘密文書によって明るみとなっている。田中長官とマッカーサー大使との接触は、訴訟手続き上、重大な問題であり、さらに藤山外相の行動からは異常な日米関係のあり方が読み取れる。そして当時の日米両政府の思惑通りに最高裁が判決したことを考えれば、そこに何らかの日米の合意や取り決めがあったことも推測される。

砂川事件最高裁判決の様子(毎日新聞「昭和毎日」より)

 さらに砂川事件の最高裁判決では、「わが国が、自国の平和と安全を維持しその存立を全うするために必要な自衛のための措置をとりうることは、国家固有の権能の行使として当然のこと」とし、いわゆる個別的自衛権を認めているが、安倍政権による2014年の限定的な集団的自衛権の行使を容認する憲法解釈変更の閣議決定や、その翌年に審議・成立した一連の安全保障関連法にあたり、高村正彦自民党副総裁は最高裁判決における自衛権への言及について、「集団的自衛権も含まれるもの」と拡大解釈・曲解・牽強付会し、解釈改憲・安保関連法成立の「法的根拠」とした経緯がある。

 砂川事件以降、「本土」のアメリカ軍基地は沖縄へ移転・集中していき、砂川闘争や内灘闘争など50年代に「本土」各地で展開されたアメリカ軍基地撤去・反対運動は成功したが、それは結果として沖縄の基地負担を増加させるものとなってしまった。そして司法は憲法判断を避ける統治行為論を固定化させていき、さらに政府・自民党はかかる沖縄と司法の間隙を縫い、日米安保の強化と安保関連法などに砂川事件を利用していったのである。砂川事件が突きつける「60年後の問いかけ」は重い。