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花瑛塾第13次沖縄派遣団⑤(高江米軍ヘリ炎上・大破現場見学)

 花瑛塾第13次沖縄派遣団は22日、昨年10月11日東村高江にて発生した米海兵隊ヘリCH-53Eの炎上・大破事故について、事故現場の土地所有者の方に当時の状況の説明を受けました。

 幸いにも事故により付近住民やヘリ乗組員などの人的被害はありませんでしたが、炎上・大破した現場である牧草地の所有者の経済的被害は甚大です。また、事故現場は高江公民館や小学校から数キロ、民家から数百メートルの地点にあり、事故の恐怖という周辺住民の精神的被害も大きいものがあります。さらに同ヘリの回転翼にはストロンチウム90を利用した安全装置が取り付けられており、付近の放射能汚染も心配されています。

東村高江の牧草地で炎上・大破する米軍ヘリ【沖縄タイムス2017年10月25日】

 2004年に発生した沖縄国際大学(宜野湾市)アメリカ軍ヘリ墜落事件など、米軍機の墜落事故は戦後枚挙に暇がない。一昨年12月には名護市東海岸の沖合で MV-22オスプレイの墜落・大破事故が起きました。沖縄で繰り返される悲劇に終わりはないのでしょうか。日米両政府に対し、事故原因の徹底的な解明と公表を求めます。

 事故の背景には、沖縄への過度な基地の押しつけがあることはいうまでもありません。そして度重なる議決や申し入れにも関わらず、市街地上空を我が物顔で低空飛行する米軍のおごり、そしてそれを許す日本政府の県民軽視、さらに日米地位協定やこれに関する各種の日米合意により、過去の同種事故の真相解明がなされなかったことなどがあげられます。事故後の米軍の対応も傲慢なものがあり、事故被害者や付近住民の感情を逆なでしました。いまこそ沖縄への基地押しつけをやめ、日米地位協定・日米合意を見直すべきです。

 また、一昨年強行された在沖米海兵隊演習場「北部訓練場」(東村・国頭村)におけるヘリパッド建設や普天間飛行場の「移設」と称する辺野古新基地建設(名護市)は、同種事故発生の危険性を高めるものです。日米両政府は、普天間飛行場の無条件閉鎖、辺野古新基地建設の全面撤回、北部訓練場での演習中止を実施するべきではないでしょうか。

 1953年に交わされた日米合同委員会による「合衆国軍用機の事故現場における措置」の合意事項の第20条には、

合衆国軍用機が合衆国軍隊の使用する施設又は区域外にある公有若しくは私有の財産に墜落又は不時着した場合には、適当な合衆国軍隊の代表者は、必要な救助作業又は合衆国財産の保護をなすため事前の承認なくして公有又は私有の財産に立ち入ることが許されるものとする。(中略)日米両国の当局は、許可のない者を事故現場の至近に近寄らせないようにするため共同して必要な統制を行うものとする。

とあり、米軍機の事故において、基地の外であろうと私有地であろうと、米軍がそこに立ち入ることを認めています。さらに日米両国が共同で事故現場を封鎖する処置を取ることを認めています。上述の沖国大ヘリ墜落事故では、現場一帯を米軍がロックアウトしたことが問題視され、今次事故でも米軍による現場封鎖が話題となりました。それらはこの合意事項に基づきます。こうした事態が認められている限り、事故の原因の解明はありえず、同種事故を防ぐことはできないといえます。

 一方、日米合同委員会の合意事項21条「捜索等の要請」は、

(前略)日本国の当局は、右施設又は区域外における合衆国軍隊の構成員、軍属又はそれらの家族の身体又は財産に対して捜索、差押又は検証を行おうとするときは、できるならば、事前に、もよりの憲兵司令官又は当該本人が所属する部隊の司令官に、その旨を通知するものとする。このことは、いかなる意味においても、日本国の法律執行員が、右施設又は区域外において、関係法令に従い、合衆国軍隊の構成員、軍属又はそれらの家族の身体又は財産に対して捜索、差押又は検証を行う権限を制限するものではない。

とも取り決めています。確かに日米地位協定に関する合意議事録では、

日本国の当局は、通常、合衆国軍隊が使用し、かつ、その権限に基づいて警備している施設若しくは区域内にあるすべての者若しくは財産について、又は所在地のいかんを問わず合衆国軍隊の財産について、捜索、差押え又は検証を行う権利を行使しない。ただし、合衆国軍隊の権限のある当局が、日本国の当局によるこれらの捜索、差押え又は検証に同意した場合は、この限りでない。

とありますが、既に比屋定泰治氏が沖国大ヘリ墜落事件に関して指摘しているように(『沖縄法學』34号、2005年)、機体そのものは米軍の財産と考えられても、現場一帯を封鎖する理由にはならず、日本側の捜査・検証が全面的に否定されるものではないはずです。そして現場の封鎖は米軍による一方的な封鎖ではなく、日米共同の封鎖であり、日本側の立ち入りが拒まれる理由はありません。そして、米軍は日本側の申し入れについて「同意」することもできるのです。

炎上・大破現場の土地所有者に当時の状況と現在の心境などを伺う

 今次事故について沖縄県警察本部は航空危険行為処罰法違反容疑で捜査を進めると報道がなされました。日米地位協定や日米合意事項の規定上も運用上も、日本側が事故の捜査・処罰、原因解明に関与できない理由はありません。日米間にある「合意」や「議事録」あるいは「密約」という壁を乗り越えるか、壁を壁のままとするかは、日本側の態度と意思の如何にかかっているのです。。

 小野寺五典防衛相は、事故発生を受けて事故機の同型機の飛行中止を要請したが、米軍は同月18日から飛行を再開しました。小野寺防衛相は、米軍に飛行再開の発表をうけて、「安全性について防衛省側に十分な説明がない状況において、米軍側が一方的にこのような発表を行ったことは極めて遺憾だ」との趣旨の発言をしました。

 沖縄県民や日本国民の神経を逆なでするような米軍の傲慢は許されないが、日本側の米軍への不十分な姿勢や対応も事故を生む原因として考えられます。北朝鮮の「脅威」を煽り、「圧力」「国難」と騒ぎ立てる前に、なすべきことがあるはずです。

 その後、沖縄県名護市辺野古崎で進められている新基地建設の現状を確認しました。

 辺野古では護岸工事が一定の進捗を見せ、8月に土砂の投入が予定されています。一方で、埋め立て予定区域にサンゴの群体が確認され、さらにボーリング調査の結果、軟弱地盤の存在が明るみになるなど、辺野古新基地建設について沖縄防衛局には新たな対応が求められています。また沖縄県は埋め立て承認撤回や工事中止命令を検討するなど、新基地建設は重大な局面を迎えています。

キャンプ・シュワブ付近の海上のオレンジのフロートの奥は立ち入り禁止水域であり、作業船などが見える