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国交相が辺野古新基地建設埋立承認撤回の執行停止を決定ー日本政府の横暴を止めるべきは誰か?

埋立承認撤回執行停止、新基地工事再開へ

 今月10月30日、石井国交相は沖縄県の埋立承認撤回について執行を停止すると発表した。早ければ明日11月1日にも工事が再開される見込みだ。

 本年8月30日、沖縄県が辺野古新基地建設の埋立承認を撤回して以降、沖縄県と政府は様々なやり取りがあった。沖縄防衛局は10月17日、行政不服審査法に基づき、公有水面埋立法を所管する石井啓一国交相に審査請求するとともに、撤回の効力を止める執行停止を申し立てた。そして沖縄県は24日、石井国交相へ沖縄防衛局の申し立ての却下を求める意見書を送付したが、これが認められず今回の執行停止となる。

 沖縄県は国地方係争処理委員会への審査申し出を検討しているとのことだが、同委員会の判断が出るまで3か月程度の時間がかかるため、それまでに工事は一定程度進むことになる。

 ここまでの流れは、翁長雄志県知事時代における埋立承認撤回取消しに関する沖縄県と政府の攻防と同じである。行政不服審査法の利用など、政府の対応については様々な問題があり、そうした横暴を許すことはできないが、前回も大きな批判を呼んだ方途と同じ轍を踏まざるを得ないこと自体、政府の手詰まり感をよくあらわしている。

新基地建設はまったく進んでいない

 昨年開始された護岸工事から1年の時が経つが、護岸はいまだ全体の一部しか完成していない。これからさらに完成した護岸のかさ上げを行う必要があり、大浦湾側の護岸工事はほぼ手つかずとなっている。そして大浦湾には「マヨネーズ並み」といわれる軟弱地盤が存在しており、地盤改良などもおこなわなければならない。もちろんキャンプ・シュワブ陸上部の工事も必要だ。全体として見れば辺野古新基地建設はまったく進んでいないのである。

 政府は警察力を背景に工事を再開し、沖縄県民に心理的に大きな抵抗感がある土砂投入をおこない、「あきらめムード」の醸成を狙っている。一方で、工事再開といっても、実際はほとんど何もできないという予測もある。昨年の護岸工事の開始でも「本体工事着工」などと大々的に喧伝したが、やったことは採石が詰まったカゴを海岸に置いただけであった。

 「勝つまで絶対あきらめない」─私たちに政府への直接的な法的対抗手段はないが、デニー知事を支えあきらめることなく粘り強く抵抗していきたい。

 そうした抵抗の一つとして、米国はじめ辺野古新基地建設や在沖米軍基地の問題を世界に訴えようという動きがある。この動きは大変すばらしいものであり、デニー知事を筆頭にぜひとも「沖縄からの報告」を世界に訴えたい。日米安保体制において、米国は日本政府に基地を提供されている側であるが、そこでの基地の使用と軍の運用は米国の責任でおこなわれている。主権国家であり人権と民主主義国家の米国もまた、自国の軍隊が他国民に和迷惑をかけている現状を放置するわけにはいかないはずだ。

日本政府と沖縄基地問題の「主体性」

 ところで、「本土」のごく一部の方面から、辺野古新基地建設はじめ在沖米軍基地の問題の解決について、米国の政治情勢なかでもトランプ大統領の意向に期待する「米国頼み」とも思える声が聞こえてきた。このような主体性なき問題意識は、「辺野古二段階返還論」などという暴論の「風まかせ」に通じる危険性がある。

 戦後、在沖米海兵隊は何度も沖縄撤退を計画し、昭和52年(1977)には「撤退は時間の問題」と当時の防衛庁が判断するに至ったこともあった。平成7年(1995)の沖縄少女暴行事件でも海兵隊撤退が議論されたが、当時のペリー国務長官は日本側が海兵隊沖縄駐留の継続を要望したと証言するなど、日本政府が米軍を食い止め、沖縄駐留を求め続けたのである。

 米国の世論を注視し、米国の世論へ問題を喚起することは大事だ。しかし本土のごく一部の方面が「トランプ大統領が在日米軍撤退を指示か」などと浮き足立ち、問題の本質を見失ったかのような議論をしていることは歓迎できない。それは沖縄基地問題についての主体性を見失うことであり、沖縄の人々を再び傷つけることになる。

 沖縄の人々が本土の人々に期待していることは何か。まさしく今回の埋立承認撤回の効力停止といった日本政府の横暴を自分の問題として受け止め、これを糺すことにある。心当たりがあれば注意されたい。