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第25回安倍・プーチン日ロ首脳会談開催される─歴史と国際法に根拠をもった原則的な領土交渉を─

日ロ首脳会談開催される

 ロシアを訪問中の安倍総理は22日、モスクワにてプーチン大統領と首脳会談を行った。安倍総理とプーチン大統領の首脳会談は、今回で25回目となる。

共同記者発表を行う日ロ首脳(AFPBB News 2019.1.23)

 首脳会談は3時間におよび、両首脳は平和条約締結に向けた交渉の本格化と、その一環として両国の貿易額を現在の1.5倍、300億ドルに引き上げることなどで一致した。会談後の日ロ共同記者発表では、プーチン大統領は「双方が受け入れ可能な解決策を見いだすための条件を形成するため、今後も長く綿密な作業が必要だと強調したい」と述べ、安倍総理は「交渉をさらに前進させるよう指示した」などと述べた。

進展のなかった首脳会談

 今回の首脳会談を一言で総括するならば、「目立った進展はなかった」といわざるをえない。

 ロシア・ラブロフ外相はここのところ「北方領土という呼称をあらためよ」、「第二次世界大戦の結果として北方領土がロシア領となったことを認めよ」など、日本の北方領土問題に関する主張を真っ向から否定する発言をしていた。首脳会談が始まる前から「ハードル」を思い切り上げられていた。

 今回、プーチン大統領からそこまで直截な発言はなかったが、かといって北方領土問題に関する目新しい発言もなく、共同記者発表も「平和条約を締結させよう」というこれまでの発言を超えるものではなかった。上げられたハードルが下がったことにより、何か進展があったかのように思いがちだが、結局は「何もなかった」ということである。

 安倍総理は北方四島の返還要求を取り下げ、色丹島・歯舞諸島の二島返還で事実上決着をつける意向と見られているが、こうしたプーチン大統領の発言を見ていると、平和条約の締結などありえるのか疑わしい。万一平和条約が締結され二島が「返還」されたとしても、ロシアの主権を認めるような、「返還」とはいえない「返還」になるのではないだろうか。

 そもそも二島返還で決着するというのならば、これまでの四島返還要求は一体何だったのか。プーチン大統領のいう日ソ共同宣言に基づく決着であれば、63年前の昭和31年(1956)において既に解決していた話である。

 もちろん二島返還で平和条約が締結されれば、国後島・択捉島はじめ他の不法占拠された北方領土の返還は望めない。それでいいのだろうか。

功に焦った自称「外交の安倍」

 自称「外交の安倍」こと安倍総理は、これまで特になかった外交的成果を得たいがため、功を焦ってロシアの主張に安易に乗ってしまった。そこにこそシンガポールで開催された第23回安倍・プーチン日ロ首脳会談以降の北方領土交渉の失敗の本質がある。このままでは、ただ北方領土を切り売りするだけで終わってしまう。

 私たちは地理的・歴史的・国際法的に見て、領土返還要求は北海道の一部である色丹島・歯舞諸島の二島返還か、千島列島全島返還(および南樺太)かのいずれしかありえず、そもそも日本側の四島返還論が無理筋であり、その意味でロシアの反発は無理もないものと考える。その点において四島返還要求を取り下げることはありえるだろう。また一般論としても、交渉が難航した場合、これまでの方針を見直して新たなアプローチを模索することは間違ってはいない。

 しかし、そうであればこれまでの四島返還論という既存の外交方針は妥当であったのか総括する必要がある。そして事実上四島返還を諦めながら、国内的にはあくまで四島返還を要求し続けるといった「ペテン」は許容できない。

 安倍総理は今日まで25回もプーチン大統領と首脳会談を重ね、ウラジミールなどと呼び、多額の経済的援助をしてきたが、それは全く無駄であり、領土交渉にはつながらないことが証明された。

 もちろん日ロ首脳同士が親密であることを否定するわけではない。日ロの平和と友好は大事であり、経済協力も重要だ。特に北方地域に責任を持つ国家として、先住民族や北方領土元島民の権利擁護や支援、水産資源の維持や環境保護などは両国が協力し積極的にやっていくべきである。

 けれども領土交渉は領土交渉である。あくまで歴史と国際法に根拠をもった原則的な領土交渉こそ、ロシアの不当性を明瞭にするのであり、そこにおいて交渉が成立するのである。

 安倍総理はこれまでの対ロ外交を根本的に見直す必要がある。