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平成31年2月7日 「北方領土の日」に関する街頭行動

「北方領土の日」にあたって

 本日2月7日は政府が定める「北方領土の日」です。花瑛塾行動隊は首相官邸・外務省・自民党本部・ロシア大使館・アメリカ大使館など各所で北方領土問題に関する街頭行動を展開しました。

「北方領土の日」根室管内住民大会で着用を見合わすことになった「島を返せ」のタスキを着用

 政府・自民党はこれまで、国後島・択捉島・色丹島・歯舞諸島の北方四島の返還を旧ソ連・ロシアに要求してきましたが、安倍政権は、これまでの北方四島の返還要求をうやむやにし、色丹島・歯舞諸島の二島返還要求に切り替えようとしています。

 戦後70年以上、北方領土問題がまったく進展しなかったことを振り返れば、これまでの交渉のあり方を見直し、新たなアプローチで交渉をやり直すことは、けして悪いことではありません。しかし、そうであれば、これまでの四島返還論とは一体何だったのか、なぜうまくいかなかったのか、真剣な総括が必要です。

 また今年の「北方領土の日」根室管内住民大会では、「島を返せ」のタスキの着用が見送られたそうです。外務大臣ですらも北方四島が日本固有の領土であり、旧ソ連・ロシアにより不法に占拠されているとの認識を示すことに消極的です。今後、国後島・択捉島の二島の返還はどうするつもりなのか、わが国にとって北方領土の位置づけとは何なのか、国民への明確な説明が必要なのではないでしょうか。

「外交の安倍」が功に焦ったか

 そもそも、ロシアの主張を聞く限り、ロシアは北方領土の不法占拠を認めず、戦争の結果、正当に得た領土かのような主張をしています。また二島返還といっても、色丹島・歯舞諸島の主権が返還されるかも不透明であり、日本にとって利のある北方領土交渉なのか、大いに疑問です。

外務省前

 これまで安倍首相とプーチン大統領の日ロ首脳会談は25回行われてきましたが、結果的にプーチン大統領は、日本側の主張と大きく異なる日ソ共同宣言に基づく二島返還による平和条約締結を提案してきました。このプーチン大統領の提案に安易にのってしまったのが安倍首相です。

 安倍首相は自分のことを「外交の安倍」などといって得意になっているようですが、第二次安倍政権の6年間で目立った外交的成果はあがっていません。日ロ首脳会談も何度も開催され、安倍首相はプーチン大統領を「ウラジミール」などと呼び、多額の経済的援助をしてきたが、領土問題に関し何らの進展もありませんでした。こうした状況下、安倍首相が「点数かせぎ」のために功を焦って二島返還に舵をきったとすれば、日本とロシアの将来、なかでも北方領土元島民や現在北方領土に住んでいるロシアの人々に、大きな禍根を残すことになります。

 もちろん日ロ首脳同士が親密であることを否定するわけではありません。また日ロの平和と友好は大事であり、経済協力も重要でしょう。特に北方地域に責任を持つ国家として、先住民族や北方領土元島民の権利擁護や支援、水産資源の維持や環境保護などは両国が協力し積極的にやっていく必要があります。けれども領土交渉は領土交渉であり、あくまで歴史と国際法に根拠をもった原則的な領土交渉こそ、ロシアの不当性を明瞭にするのであり、そこにおいて交渉が成立するのではないでしょうか。

 安倍首相はこれまでの対ロ外交を根本的に見直す必要があります。

旧ソ連の対日参戦とアメリカの教唆

 昭和20年(1945)8月9日、旧ソ連はわが国との中立条約の有効期間内にも関わらず対日参戦し、満州・朝鮮・南樺太・千島列島を攻撃、占拠しました。爾来、70年以上の長きに渡り、不法に占拠されています。旧ソ連の対日参戦が国際法違反の侵略行為であることは明白であり、さらに戦闘において旧ソ連が行った殺人・強盗・放火・略奪など数々の蛮行は許しがたく、私たち花瑛塾はこれを厳しく糾弾します。

 一方で、ソ連の対日参戦の背景には、アメリカによる教唆が存在することは見過ごせません。

 第二次世界大戦中のヤルタ会談において、アメリカ大統領ルーズベルトは、ソ連書記長スターリンに対日参戦を促し、その見返りとして日本領であった千島列島と南樺太の領有を認めました。さらにアメリカは、ソ連軍に対し、北方領土上陸作戦に必要な上陸用舟艇や掃海艇などの軍艦145隻を貸与し、アラスカにて、ソ連軍将校と兵士1万2千人に訓練を施していたことが明るみとなっています。

 ソ連による対日参戦と領土侵略は許されませんが、それを唆したアメリカも同罪であり、戦後の日本外交がソ連の領土侵略への反感をもとに、反ソ連・対米協調路線に極端に舵を切ったことは、まさしく錯乱・矛盾の極みといわざるをえません。

アメリカ大使館前

戦後の対ソ・対ロ領土交渉の問題点

 わが国は戦後、旧ソ連と領土返還・国交回復交渉を行い、昭和31年(1956)の日ソ共同宣言を締結しました。これにより日ソ国交は回復し、わが国は国際社会へ復帰しました。その上で領土交渉が進む予定でしたが、難航し現在に至ります。

 領土交渉におけるわが国の主張は、国後島・択捉島・色丹島・歯舞諸島の四島は、北海道の一部であるから返還せよという主張ですが、色丹島・歯舞諸島は北海道の一部だとしても、国後島・択捉島は千島列島の一部であり、二島についてわが国はサンフランシスコ条約で主権を放棄しています。このようなわが国の主張は不当であり、その意味においてロシア・旧ソ連の反発も無理はないといえます。

ロシア大使館前

 いま、わが国とロシアとの間で確認すべきことは、以下、大きく四つあります。

 第一に、旧ソ連の対日参戦は国際法違反の侵略行為であり、これによる領土占拠の無効を確認すること。

 第二に、旧ソ連の対日参戦は第二次世界大戦の基本方針である「領土不拡大」に反し、これを追認するサンフランシスコ条約の領土条項の無効を確認すること。

 第三に、過去のわが国の不当な領土の主張の撤回。

 第四に、旧ソ連の対日参戦を教唆したのはアメリカであり、日ソ・日ロ領土交渉に際し、陰に陽に介入をし続け、わが国と日ソ・日ロの友好を妨害し続けたのもアメリカであって、今後の日ロ領土交渉へのアメリカの妨害の排除を確認すること。

 これらの点を踏まえた上で、国際法上もっとも適法であった状況、すなわち昭和20年8月8日の状態へ国境線をロールバックし、日本の主権を確認した上で、74年という歴史の重みを踏まえ、そこにおいて新たに築かれた人々の暮らしや文化を理解し、現在の北方地域の現状を根底から覆すことのない、新たな領土交渉のあり方を模索する必要があるのではないでしょうか。

日ロ新外交の確立と展開を

 江戸幕府と帝政ロシアの日露和親条約以来、樺太・千島交換条約、ポーツマス条約と国際法にのっとり国境線は幾度も変更されました。日ロともに、国境線の変更をためらう理由はありません。特に日露和親条約における樺太島雑居地化などは、わが国とロシアの先人の偉大な知恵といえます。こうした先人の知恵に学び、過去の経緯に執拗に拘らず、大胆な領土交渉をしていくべきではないでしょうか。

 同時に、領土交渉とは切り離した上で、北方領土元島民の故郷への自由な往来や交流、北方地域の先住民たるアイヌの人々の権利擁護を日ロ両国で支援するなど、国家に翻弄された元島民や先住民のために、北方地域に責任を持つ国家である日ロが連携すべき点は多々あるはずです。

花瑛塾メンバーは過去、ロシア・旧ソ連により不法に占拠されている南樺太(サハリン)で行われた日本人犠牲者慰霊祭を祭員として奉仕している

 これまでの北方領土交渉の問題点を真剣に総括した上で、原則的かつ柔軟な日ロ新外交の確立と展開を訴えます。