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2019年(令和元)6月14日~17日 花瑛塾亜細亜倶楽部(香港「反送中」「林鄭下台」運動と日本の過去、そして沖縄)

 香港はいま、刑事事件の容疑者の身柄を中国本土に送致する条例の改正案(「逃亡犯条例」改正案)に関して揺れています。この「逃亡犯条例」改正案は、一国二制度のもとで「高度な自治」を実現している香港の自治・自己決定権を香港政府みずから否定し、自由と人権と民主主義を危うくさせる条例であるとともに、送致対象に観光で香港を訪れる外国人も含まれることもあり、世界的に注目されています。

立法会につながる通路で賛美歌を合唱し抗議の意志を示す若者グループ

 逃亡犯条例の改正を目指した香港政府の林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官に対する香港市民の批判の声は非常に強く、6月9日には100万人もの市民が「反送中」「撤回悪法」などを訴えるデモを行いました。以降、香港の議会である立法会周辺で連日にわたり市民の抗議行動が繰り広げられ、12日には警官隊が市民に向けて催涙銃を発砲するなど暴力で弾圧しました。

 こうした香港政府の対応は、市民の怒りの炎に油を注ぐかたちとなり、16日には200万人もの市民が結集し、「反送中」「撤回悪法」に加え「林鄭下台[林鄭退陣]」を求めるデモ行進と立法会前での座り込みを行いました。

延々と人並みの続く16日のデモ
「没有暴動[暴動ではない]」と掲げる市民のデモ

 林鄭行政長官は15日、「逃亡犯条例」改正案の審議の先送りを表明しましたが、「先送り」というあいまいな対応と市民の抗議に対する弾圧についての謝罪がなかったことから市民の反発を買い、結局は16日のデモの後に謝罪に追い込まれました。現在も市民の抗議行動は続き、求心力が低下した林鄭行政長官の退陣が現実味を帯び始めています。

 花瑛塾亜細亜倶楽部は14日から17日まで香港に滞在し、香港市民の猛烈な怒りと香港の自治・自己決定権を守る強い意志をこの目で見るとともに、市民と一緒に声をあげました。そうしたなかで先日、「反送中」「撤回悪法」「林鄭下台」運動を戦う香港のアクティビストの劉太炎氏より日本に向けて次のようなメッセージをいただきましたので紹介します。

「香港問題私見」  劉太炎

由6月9日至今(16日),香港的抗爭已經由最初反對修訂逃犯條例,轉變為全面反對獨裁的鬥爭,類似於六十年代的日本或者八十年代的韓國,一大捆乾柴只需要一根小火柴便能燃起熊熊烈火。昨天(15日)有一位男子手持反對條例的標語自殺身亡,令到更多人憤怒。而這根火柴的起點,竟然源自一對情侶的謀殺案。

在2018年初,有一個年輕男子懷疑其女友和別人發生關係懷孕,因此而殺死了女孩,並潛逃回香港。由於香港和台灣之間沒有引渡條例,所以香港司法機關不能定罪在台灣犯罪的兇手。過去在英殖時代,不少香港罪犯會逃跑至台灣。香港的行政長官林鄭月娥便利用此事修訂引渡條例,令到香港可以將罪犯引渡至中國大陸、台灣受審。但是眾所周知,中國沒有司法獨立的體制,中國的一切由共產黨控制,中國政府可以利用這條例去逮捕所有批評共產黨的香港人,或者捏造罪名去控告身在大陸的香港人。

在數十日的抗爭中,警察使用過度武力,大量使用催淚彈、胡椒噴霧及橡膠子彈,逮捕三十多人,檢控三百多人。網上甚至傳聞中國武警及解放軍介入此事,令人畏懼。由於今年是天安門事件(1989)三十週年,香港人都很畏懼事件重演。

過去香港多次進行反對中國共產黨的遊行,比如03年的反對二十三條(國家安全法)遊行、2014年雨傘革命、2016年旺角事件,香港政府將反抗者定罪為「暴徒」並治以重罪。在中國古代時,暴君夏桀自詡太陽,百姓云「時日曷喪,予及汝偕亡」,意思為暴政何時滅?若不滅就同歸於盡。孟子曾說:「聞誅一夫紂矣,未聞弑君也」,若果統治者德行敗壞,人民推翻他是正義之行為。現在西洋諸國毫無作為,故我希望日本諸君,能夠將眼光放在香港、放在大陸,完成昔日興亞志士未竟之大業。古人云:「得道多助」,拯救香港,也是為日本獨立貢獻出一分力量。

 劉氏のメッセージにも触れられている通り、香港では返還以降、香港の自治・自己決定権を手放すような当局の動きがあり、香港の自由と人権と民主主義が脅かされ、その都度雨傘革命など市民の大規模な抗議行動が発生しています。

 アヘン戦争を契機にイギリスの植民地(租借地)とされ、中国返還後は自治・自己決定権が脅威にさらされている香港の現状は、どことなく沖縄の歴史や沖縄を取り巻く現状とも重なり合うように見えます。

 そればかりではなく、香港の自治・自己決定権や自由と人権と民主主義について、日本は歴史的に深い関係があります。すなわち日本は先の大戦が開戦された1941年(昭和16)12月8日に香港のイギリス軍を攻撃し、同年12月25日には軍事占領しました。日本による香港攻撃と占領は、援蒋ルートの遮断を狙うとともに、香港を東南アジアを支配する上で重要な拠点と位置づけたものでした。そのため占領以降、日本軍は香港で過酷な軍政を敷き、香港の自治・自己決定権を奪いました。

「撤回送中悪法」のスローガンが掲げられている香港大学構内の施設 香港大学は日本占領期間、事実上の閉校に追い込まれている

 日本は過去、香港の自治・自己決定権を奪い、日本政府はいま、沖縄の自治・自己決定権を否定し続けています。私たちは香港の現状と市民の戦いへの連帯や香港政府あるいは中国共産党への批判などは、このように日本の歴史と現在の日本政府の行動を批判するなかで関心をもって行っていきたいと考えています。

 戦前、中国最初の政党「中国革命同盟会」の結成に関わり、孫文や宋教仁を支援するなど、中国革命に身を捧げた宮崎滔天など「大陸浪人(シナ浪人)」といわれる一群の人々がいました。大陸浪人の系譜は戦前の右翼の系譜とも重なり合いますが、一方で大陸浪人のなかには国威伸張のため国家の手先として大陸を跳梁跋扈した人物もいます。滔天はこうした大陸浪人を「国家的浪人」とか「シナ占領主義者」と批判し、「一言にして吾徒の宗旨を告白すれば、人類同胞主義也。寓邦平和主義也」とまで述べています。

多大な批判を浴びる林鄭行政長官

 その上で滔天は、当時の日本外交が列強に気がねをし革命派を援助しないのならば、「僭越ながら吾等のような連鎖も必要」と述べ、日中両国を結ぶのは民間の志士しかないとしています。

 「僭越ながら」花瑛塾亜細亜倶楽部は日本の歴史といまの政府の対応を批判しながら、アジアの市民と「連鎖」していきたいと考えています。