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令和3年1月19日 岸信夫防衛大臣宛要請行動(北部訓練場返還地における放射性廃棄物について)

 昨年12月、沖縄県北部の米軍演習場である北部訓練場の返還地で米軍が投棄したとみられる放射性廃棄物が発見され、テレビや新聞などで大きく報道されました。

 放射性廃棄物の投棄自体問題ですが、この放射性廃棄物が現在まで撤去処理されていない現状も大変由々しいものがあります。

 本件について19日、防衛省を訪れ、放射性廃棄物の撤去処理や投棄の経緯の調査を求めるとともに、放射性廃棄物も含め返還地に投棄されている大量の米軍廃棄物について、米軍に撤去処理の協力をさせるよう日米地位協定の改定を求める要請書を手交しました。

防衛省担当者(右)に要請書を手交

 以下、手交した要請書の内容です。

   ※

  要  請  書

 平成二十八年十二月、沖縄県東村ならびに国頭村にまたがる米海兵隊「北部訓練場」の一部、約四千ヘクタールが米国から返還されました(以下「返還地」といいます)。

 これをうけて沖縄防衛局は、一年程度の時間をかけ、返還地の使用履歴を文献などで調べる「資料等調査」を実施するなどして、土壌や水質の汚染、残置された米軍のものと思われる不発弾や廃棄物などを撤去する支障除去を行い、平成二十九年十二月に返還地が地権者に引き渡されました。

 しかし、返還地では、沖縄防衛局による支障除去完了後も米軍のものと見られる空包や薬きょう、廃タイヤ、ドラム缶など多数の廃棄物(以下「米軍廃棄物」といいます)が発見されている他、米軍廃棄物が残置されていた土壌から有害なポリ塩化ビフェニル(以下「PCB」といいます)が検出されるなど土壌汚染も確認されています(「琉球新報」平成三十一年三月九日の報道など)。

 これら返還地における米軍廃棄物や土壌汚染については、新聞やテレビなどでも報じられている他、返還地が世界自然遺産登録の推薦地に含まれていることから、環境問題としても問題視され、国会審議などでも取り上げられており(平成三十年五月十七日参議院外交防衛委員会での伊波洋一議員と小野寺五典元防衛大臣のやり取りなど)、返還地において米軍廃棄物が残置されていることは、政府としても一定の事実は認めているところです(平成三十年一月三十一日提出の糸数慶子参議院議員「米軍北部訓練場の返還跡地の支障除去等に関する質問主意書」に対する平成三十年二月九日付「答弁書」など)。

 そうしたなか、昨年十月二十五日、沖縄県国頭村安田の返還地内のFBJヘリパッド跡地の茂みから、付近住民(以下「発見者」といいます)が放射性物質「コバルト60」を含む通信機器の機材であるTR管(型番1B63A)十九個を発見しました。また、このTR管に付着していた布もしくは紙のようなものから、PCBが検出されました。言うまでもなく、このような危険な物品の投棄は、関係法令に抵触する犯罪です。

 本件は大きく報道されましたが(「琉球新報」昨年十二月十六日など)、昨年十月六日、沖縄防衛局の指示のもと、FBJヘリパッド跡地に投棄されていた米軍廃棄物であるライナープレートの撤去作業をしていた業者がTR管を発見し、業者からその旨報告をうけた沖縄防衛局がTR管の撤去を検討していたと報じられています(「琉球新報」昨年十二月十八日)。沖縄防衛局は昨年十月にはTR管の存在を認識し、また撤去を検討していながら、二ヵ月以上放置してきたということになり、今少し速やかな対応をとっていただきたかったと残念でなりません。

 TR管が発見された場所の周辺には小川やダムが存在しており、これらは沖縄県内全域をまかなう重要な水源となっています。本件も含め、返還地における米軍廃棄物や土壌汚染の問題は、自然や人体への重大な影響という意味でも大きな問題です。

 そうした懸念も含め、令和元年十一月五日、私たちは貴省に赴き、防衛大臣に宛てて「北部訓練場返還地における米軍の廃棄物について、あらためて調査し、撤去など必要な措置を取ること」との趣旨の要望をしました。

 この要望に対する防衛省からの回答の一部は、「今後も新たに廃棄物等が発見された場合には跡地利用に支障がきたすことがないよう土地所有者及び関係機関と調整し、適切に対応して参ります」というものでしたが、本件のTR管はまだ返還地に放置されたままであり、適切な対応とは言い難いと考えます。

 なお、発見者は、昨年十二月十八日、TR管を含む返還地から発見された米軍廃棄物を北部訓練場まで運搬し、それらを米軍に直接引き取らせました。日米地位協定第四条によると、在日米軍は提供施設などの原状回復義務を免れていますが、本件では米軍が返還地の米軍廃棄物を直接引き取るなど、原状回復に協力しています。

 これらを踏まえ、次の通り要請します。

  記

  1. TR管とこれに付属する米軍廃棄物をただちに撤去し、適正に処理すること。また返還地に同種の米軍廃棄物が残置されていないか調査し、発見した場合は同様に撤去、処理すること。
  2. TR管の投棄にかかる経緯について、米軍に事実関係を確認し、それを公表すること。
  3. 返還地に今なお残る米軍廃棄物の状況や土壌汚染、水質汚染などについて、あらためて広範囲に調査し、撤去など支障除去を適正に実施すること。
  4. 付近住民などが返還地で米軍廃棄物を発見した場合の通報窓口や担当部局を明確にし、関係自治体や住民に周知すること。
  5. 在日米軍が米軍廃棄物を直接引き取っている現状に鑑み、日米地位協定における提供施設の原状回復義務の免除にかかる条項や運用を見直し、米軍廃棄物の撤去や処理について、米軍に協力をさせること。

  以上

 速やかなる対応をお願いします。

令和三年一月十九日

  花瑛塾 塾長 仲村之菊

防衛大臣 岸信夫 閣下

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手交した要請書

 要請に対し防衛省側から、要請の1については跡地利用特措法に基づき土地所有者や関係機関と調整して適切に対応する、2については米側に経緯の確認を行い、米軍の回答次第だが県や村などにどのようなかたちになるかともかく公表する用意はある、5については日米地位協定に基づき米軍に現状回復の義務はないものの、日本側は残された建物や工作物の補償をする義務はないという点で双方の権利と義務のバランスをとっている、などの回答がありました。

 なお要請行動参加者を減らしたり、要請書の読み上げを省略するなど、防衛省側も含め感染症対策を講じた上で要請行動を実施しました。

防衛省側より要請内容への回答などを伺う

令和元年11月5日 河野太郎防衛大臣宛要請書手交(北部訓練場返還地における米軍の行動の調査について)