平成29年12月1日 安倍政権糾弾・日米安保体制の見直しを訴える街頭行動

 花瑛塾行動隊はこの日、首相官邸前・国会前・自民党本部前・アメリカ大使館前などで、「北朝鮮脅威論」を煽り立てる安倍政権を糾弾するとともに、いびつな日米安保体制の見直しと、対北朝鮮軍事行動の危険性を訴えました。

 昨年4月、沖縄県においてアメリカ軍属(元海兵隊員)がうるま市の女性を殺害し、遺体を遺棄する事件が発生しました。そして今日、那覇地裁はアメリカ軍属の被告に無期懲役の判決を下しました。

 花瑛塾行動隊はこの判決を受け、度重なるアメリカ軍機の事故や米兵犯罪などの背景にある日米地位協定とこれに基づく日米合同委員会合意の見直しを訴えるとともに、日米地位協定と沖縄県への過大な基地負担集中によって成立しているいびつな日米安保体制の見直しを訴えました。

 日本はアメリカの植民地ではなく独立国であり主権国家です。そしてアメリカも民主主義国家であり、他国の民意を無視し、他国の主権や国民の人権侵害が許されるわけではないはずです。日米がともに日米安保体制の問題点を再考し是正する必要があり、その上で対等かつ友好的、そして新しくかつ本来的な日米関係を構築するべきではないでしょうか。

アメリカ大使館前にて

 また安倍首相は「北朝鮮の脅威」を煽り立て、森友・加計問題など自身と身辺への疑惑を糊塗しています。森友問題においては、既に森友側と財務省側が価格のすり合わせを行っている音声データが公開されるなど、これまでの財務省の答弁の虚偽が明白となっていますが、安倍首相は「脅威」「国難突破」と吹き上がり、アメリカ製の兵器の購入・配備を明言し、5兆円を超える防衛予算が予定されるなど、軍備拡大路線にひた走っています。

 軍備拡大路線は多大な財政負担も強います。V-22オスプレイや地上イージス、無人航空機グローバルホークなど、安倍政権が推し進める軍備拡大には莫大な予算が必要となり、この一部を取りやめるだけでも多くの保育施設が設置可能となり、給付型奨学金なども拡大できるといわれています。無意味な軍備拡大をやめ、子育てや福祉・医療、あるいは教育などを充実させることは、長期的には国力を増強させ、国の守りに資するものであるはずです。

 そして、これまでの安倍首相の対北朝鮮強硬外交が北朝鮮の軍事行動を阻止した事実はなく、ミサイル発射・核実験・日本人拉致事件など懸案事項の解決に役立ったことは一度もありません。北朝鮮のミサイル発射や核実験は国連安保理決議違反の明確なる国際社会への挑戦であり、言語道断の軍事的挑発ですが、軍事に対し軍事で対抗することは危険きわまりないことであり、そこに利もなければ義もありません。

 アメリカ・トランプ政権が北朝鮮との対話を模索するティラーソン国務長官を解任するとの報道もありますが、アメリカによる対北朝鮮強硬外交・軍事的威嚇は、戦争に直結する危険な愚行です。その愚行を礼賛し、自己の政権運営に利用している安倍首相の進む道に未来はあるのか、私たちは考え直すべきです。

 またロシア大使館前にて、ロシアへ北方領土の返還と戦争犯罪の反省を求めるとともに、これまでの日ロ外交の反省に立った新たな日ロ外交の展開と、アイヌの人々や北方領土元島民への支援など、北方地域に責任を有する国家としての日ロ両国による共同行動を呼びかけました。

ロシア大使館前にて

東アジアの視線から見る琉球・沖縄

  11月も末となり、間も無く12月を迎える。慌ただしい12月となれば、年の瀬まであっという間である。時の経つは早いものだ。

 徳川家康が征夷大将軍に宣下された1603年から3年間、琉球王国に渡った浄土宗名越派の僧侶・袋中は、1608年前後に琉球への仏法の渡来や琉球の神祇などを論じる『琉球神道記』とともに、消息型往来物といわれる手紙形式の琉球情報書『琉球往来』を著述した。

 袋中『往来』は『神道記』に比べ陽の目を見ることはなかったが、江戸時代後期、いまから207年前の文化6年(1810)12月、国学者・伴信友が京都にて『往来』を入手したことが記録されている。信友はその他にも新井白石による琉球研究書『南島志』を受容した上で、日本と琉球あるいは朝鮮や中国などの関係を論じる『中外経緯伝』を天保9年(1838)に著すなど、琉球への強い関心を有していた。

 先学の指摘によると、信友は『経緯伝』にて、白石『南島志』を琉球が「皇国風に化り」「臣国となりぬる」由来、つまり琉球が日本へ従属し感化される由来を説く書であると曲解する。そして琉球の「皇国風」の初発として琉球王国最古の正史『中山世鑑』などを史料として駆使しながら、源為朝が琉球に渡り、その子が琉球で舜天王として王朝を開いたとする「為朝渡琉譚」を論じ、さらに為朝に由来する舜天王統から第二尚氏までの血統的一系をいい、現在に至る琉球の「皇国風」を理由づける。

 『世鑑』は第二尚氏・尚質王の時代に、当時の摂政・向象賢(羽地朝秀)が編纂した正史であり、その内容は確かに冒頭に為朝渡琉譚を引き、その子・舜天王から第二尚氏に至るまでの万世一系的な王統論を展開している。しかし先学の指摘によれば、さしもの向象賢も『世鑑』において舜天王統・英祖王統・察度王統・第一尚氏・第二尚氏という琉球の王統交替を無視しえず、英祖王の日光感精型神婚譚や察度王の天人女房譚など天子感生説をもって各王統の始祖物語を記述し、始祖を聖化・特別視している。『世鑑』はけして安易な日琉同祖論を論じるものでも、舜天王統から第二尚氏までの万世一系を論じる史書でもなく、「矛盾を孕む」史書である。

 さらに近年、従来の琉球言説を琉球―日本や琉球―薩摩といった一対一対応ではなく、東アジアの視点から読み直す試みがなされている。確かに上述の袋中『往来』など近世の琉球言説や琉球情報からは、琉球―日本―朝鮮‐中国はてはフィリピン・ルソンが登場する。薩摩の琉球侵略を語る「薩琉軍記」など「侵略文学」においても、秀吉の朝鮮侵略と薩摩の琉球侵略を絡めつつ、薩摩―朝鮮―琉球の関係が語られるなど、琉球と東アジアの複合関係が容易に読み解ける。

 正史『世鑑』がいう英祖王など琉球各王統始祖の日光感精型神婚譚なども東アジア各地で見られる天子感生説である。例えば北魏の太祖道武帝、漢の武帝、高句麗の始祖・朱蒙など、日光感精型神婚譚はモンゴル、中国、朝鮮などに見ることができる。日本においても天之日矛伝承が日光感精型神婚譚を語り、他にも中世において散見される。かかる事実や指摘を踏まえることにより、信友が袋中『往来』を手にした文化6年12月より207年後の12月を控え、東アジアと対抗・対決するアメリカ軍が配備された沖縄―日本ではなく、また従属・感化をもって語られる沖縄―日本ではなく、東アジアそのものとしての複合関係的な東アジア―沖縄―日本を考えていきたい。

花瑛塾会報「神苑の決意」第14号(12月号)発行しました

 花瑛塾会報「神苑の決意」第14号(12月号)発行しました。読者の皆様のお手許には、近日中に届くと思います。

 1面「主張」は、11月16日をもって花瑛塾結成1周年を迎え、この1年の総括と花瑛塾結成趣意書および花瑛塾綱領を中心とした今後の取り組みについて、3面「解説」は在日アメリカ軍基地の騒音や米兵犯罪、日本の刑務所における米兵受刑者処遇など、日米地位協定と日米合同委員会合意の問題点を取り上げています。

 その他、本号各記事の見出しや購読方法など、詳細については当サイト花瑛塾会報「神苑の決意」もしくは花瑛塾ONLINE STOREより御確認下さい。

 また花瑛塾会報「神苑の決意」は、ミニコミ誌を扱う「模索舎」(東京都新宿区)にも納品しており、バックナンバーなども置いていただいております。最新号は近日中に納品予定ですので、そちらでもお求め下さい。

 模索舎Webサイト「神苑の決意」紹介ページ(12号、10月号)

http://www.mosakusha.com/newitems/2017/09/12_15.html

平成29年11月25日 第4回自主三島・森田祭(花瑛塾青年・学生寮)

 三島由紀夫、森田必勝らによる「楯の会事件」から47年目の今日、花瑛塾青年・学生寮にて「楯の会事件」においてみずから命を絶った三島、森田を慰霊する第4回自主三島・森田祭を執り行いました。また祭典後、葦津珍彦、真弓常忠ら神道家による三島由紀夫「英霊の声」など三島文学への評論や楯の会事件に関する声明・発言などを参列者全員で読み解きました。

 葦津は三島由紀夫「英霊の声」評にて、日本の忠臣の行動方式を楠木正成に代表される「絶対随順」と、真木和泉守や西郷隆盛に代表される「法外の浪人(アウト・ロウ)」の2種類に類型化し、その上で二・二六事件の決起将校はあくまで「絶対随順」の「正常の武人」「忠誠の臣」であり、最後の最後で勅命に服して原隊復帰したのであるが、それでもなお賊徒とされたため「怨霊」と化したとし、その慰霊の必要性を説きます。また真弓は三島の「人間宣言」理解に異を唱えつつも、自身にも「英霊の慟哭」は聞こえると理解を示しました。

 さらに葦津は、楯の会事件から10日後、事件について発言しています。そこで葦津は、自衛隊は「憲法以後」に新設されたものであり、三島のいう「憲法により屈辱を強いられている自衛隊(武士)」はありえず、三島的精神伝統が尊ぶ日本武士=皇軍は存在せず、三島が懸命に警察・機動隊と自衛隊の峻別をいっても、そこに本質的な差異はないとします。むしろ憲法の問題を解決すべき主体は現憲法以前から存在する民族大衆・国民大衆であり、そうした人々のなかに決起を期待すべきだとし、さらに大衆は三島の悲壮な姿に共感と同情を有したとします。

 花瑛塾は葦津的問題意識を踏まえ、制憲主体である国民とともに憲法を考えるべきと考えます。そして大原則として日本国憲法の歴史的な重みとその先進的な価値を尊重しますが、日本国憲法そのものが憲法改正を保障している通り、憲法条規に基づき改憲自体は否定しません。しかし安易かつ危険な「改正できれば何でもいい」といった改憲論には与せず、改憲論や改憲という行為が戦後憲法下70年のまごうことなき日本の歴史に手をかけるものである以上、改憲を目指す為政者へ三島・森田のごとき「覚悟」を問うものです。

平成29年11月24日 花瑛塾結成1周年記念街頭宣伝行動

 この日、花瑛塾結成1年を記念して、都内一円にて街頭宣伝活動を行いました。

 現在、沖縄県には、普天間飛行場や北部訓練場など、在日アメリカ軍専用施設の約7割が集中し、戦闘機の騒音や米兵犯罪、米軍による土地の強制使用など、過大な基地負担が問題となっています。

 東京にも横田飛行場などアメリカ軍基地はありますが、日本本土のアメリカ軍基地の大半は、国有地など公有地に建設されています。しかし、沖縄県のアメリカ軍基地は、その大半が住民から強制的に土地を取り上げて建設されたものであり、基地の歴史的な経緯が大きく異なります。

 先の衆議院総選挙でも示された通り、沖縄県では基地の返還や基地負担の軽減を求める声が圧倒的ですが、安倍首相は辺野古における新基地建設を強行するなど、沖縄の民意を踏みにじり続けています。

 米兵犯罪も日常的に発生しており、飲酒運転の米兵による死亡事故や性犯罪などが横行しています。

 日米地位協定やこれに基づく日米合同委員会による合意事項によって、日本側による米兵犯罪の捜査や処罰には大きな壁があります。さらに日米地位協定や日米合意によって、日本の刑務所に収容された米兵は、日本人受刑者とは異なる特別待遇が行われています。

 先月10月に沖縄県で発生したアメリカ軍ヘリCH‐53Eスーパースタリオンの炎上・大破事故においても、日米地位協定や日米合意に基づき、日本側による事故の捜査や検証は行われず、アメリカ軍は事故からわずか1週間後には同型機の飛行を再開させました。

 日本はアメリカの植民地ではなく、独立国であり主権国家であるはずです。またアメリカも民主主義国家として、他国の民意を無視し、主権を侵害するようなことはあってはならないはずです。基地問題をはじめ偏った日米関係を是正し、対等で友好的な、新しい、かつ本来的な日米関係を構築する必要があるのではないでしょうか。

 また先月10月、衆議院総選挙が行われ、自民党・公明党が多数の議席を得ました。安倍首相は、自身と身辺におよぶ数々の疑惑や傲慢な態度への批判について「丁寧な説明をする」「謙虚な政権運営をする」といっていますが、早速、首相周辺からは国会質疑について「与党と野党の質疑時間を見直す」「首相の国会への出席を見直す」などといった発言が飛び交っています。

 また安倍首相は、トランプ大統領の来日をうけて、F-35A闘機や新型迎撃ミサイルなどアメリカ製の兵器を大量に購入すると発言しました。その他にも、安倍政権は、1基1千数百億円といわれる地上イージスの導入を目指し、さらに数百億円もの予算をかけて無人航空機グローバルホークを配備する予定といわれています。

 日本の防衛費はいつのまにか5兆円を突破しています。その上でさらに大量のアメリカ製の兵器を買う理由はあるのでしょうか。これらの兵器購入を取りやめるだけで、たくさんの保育所が設置可能となり、給付型奨学金を拡大することができるといわれています。

 こうした安倍首相の軍備拡大は、安倍首相が喧伝する「北朝鮮の脅威」なるものに裏付けられています。しかし、トランプ政権におけるティラーソン国務長官は北朝鮮との対話を模索しており、ボルトン元国連大使も「北朝鮮は脅威ではない」と明言するなど、安倍首相が叫び続ける「北朝鮮の脅威」なるものは本当に存在するのでしょうか。

 もちろん、北朝鮮のミサイル発射や核実験は、国連安保理決議に違反する重大な国際社会への挑戦ですが、北朝鮮のミサイルは宇宙空間を飛翔したのであり、さらにミサイルはアメリカに向けられていると北朝鮮自身が発言するなど、北朝鮮脅威論の根拠は不明です。安倍首相は北朝鮮の脅威なるものを利用し、政権への求心力を高めているだけではないのでしょうか。

 安倍政権が煽り立てる北朝鮮脅威論と、これに基づき突き進む軍備拡大路線は、北朝鮮問題の解決につながらないことは、これまでの北朝鮮外交の経緯が証明しています。

 私たちは、いまこそ安倍政権が進む道に未来はあるのかを考え直し、新たな政治を構築する必要があるはずです。

 以上のことを自民党本部前・首相官邸前・国会前・外務省前・アメリカ大使館前にて訴えた後、ロシア大使館前にて北方領土の返還とこれまでの日ロ外交の全面的な見直し、日ロ両国の新たな友好関係の構築を訴えました。

平成29年11月24日 花瑛塾結成1年「道統の祖」墓参

 24日、花瑛塾結成1年を期して、花瑛塾「道統の祖」墓参を行い、結成よりこれまでの取り組みと今後の決意を奉告しました。

 故人は、昭和初期に東京に生まれ私立大学に進学しますが、終戦直後の混乱の時代にあって中途で退学、その後は渋谷にて青春を過ごし名を馳せるとともに、昭和後期より多くの青少年の指導に当たりました。

 故人の墓は、東京市街を一望できる山麓にあり、いまなお私たちを睥睨しているかのようです。

 無論、私たちは故人の謦咳に接したことはなく、いわば故人の没後の門人です。しかし、故人を思い、慕い、その足跡を学び、その遺志を継承・発展させようという思いは真剣です。

 今後とも墓参や故人に関する事績の顕彰を行っていく予定です。

平成29年11月23日 第34回新嘗を祝ふ集ひ(新嘗を祝ひ集ひ実行委員会)

 第34回「新嘗を祝ふ集ひ」(新嘗を祝ふ集ひ実行委員会)に参加しました。

 新嘗祭祭典の後、稲貴夫氏(元神社本庁総合研究部長)による「御代替はりと大嘗祭」と題した講演を拝聴しました。

 古来より天皇が大嘗祭において奏上する起請文には、年穀の豊穣の感謝と新穀の神供の趣旨を述べるとともに、「自然災害を未然に防ぐこと」、つまり「防災」が祈念の一つとしてあります。

 大嘗祭という天皇の即位における一世一度の新嘗祭における天皇の起請文の主眼の一つが「防災」という点から、災害列島日本の共同体信仰としての神道の発生を見ることができます。

新嘗祭と天照大神の御教え

 明日23日は、宮中および全国各神社で新嘗祭が行われる。新嘗祭は1年の豊穣を予祝する2月の祈年祭と対をなす農耕祭祀であり、収穫祭の一つと考えられます。中国における「嘗祭」が秋における稲の祭儀であるように、新嘗祭は日本の代表的な稲作儀礼であり、その起源は稲作の開始とともにあったと考えられます。さらに、『日本書紀』にも「天照大神の新嘗しめす時」「新嘗の月に当りて、宴会の日を以て、酒を内外命婦等に賜ふ」などとあります。

 もともとは11月の下卯日を祭日としていましたが(三卯あれば中卯日)、明治6年の新暦採用により23日と定められました。新嘗祭では、宮中神嘉殿内に神座・御座を設け、宵・暁と2度、天皇陛下みずから天照大神そして天神地祇に神膳をお供えします。ちなみに、天皇即位後の一世一度の新嘗祭は「大嘗祭」といわれ、天皇みずから天照大神・天神地祇に神膳をお供えするとともに、五穀豊穣と国家国民の安泰、そして災害の予防と国土の安全を神々に起請します。「防災」が天皇即位の一世一度の起請であることは、現代においても重要な意味を持つものでしょう。

 伊勢神宮では10月15日より大切な収穫祭である神嘗祭が執行されます。幕末の国学者・鈴木重胤(1812~63)は、平安時代に編纂された「延喜式祝詞」における祈年祭詞を分析し、この神嘗祭と新嘗祭の連動を指摘したといわれています。先学の指摘によると、重胤は「祈年祭詞」における「荷前者。皇太御神能大前爾。如横山打積置氐、残乎波平聞看。」を典拠に、伊勢神宮の神嘗祭と宮中の新嘗祭の連動した神祇祭祀であることを指摘し、さらに『日本書紀』に見える三大神勅の一つ「吾が高天原の所御す斎庭の稲穂を以て、亦吾が兒に御せまつるべし。」との「斎庭之穂の神勅」をもって、論拠を明確にしたとします。

 つまり、皇祖神は皇孫に神物たる稲穂を授け(「斎庭之穂の神勅」)、皇孫はそれを人民に勧農し、人民はその収穫を貢物として皇孫に納め、皇孫はそれを皇祖神に捧げ(神嘗祭)、また自ら聞食し(新嘗祭)、人民も賜る(節会)という皇祖神―皇孫―人民という三者の関係は、神嘗祭そして新嘗祭という神祇祭祀を通じ現実に具現化するということです。

 平安時代末期から鎌倉時代にかけて撰述された『宝基本記』によると、垂仁天皇26年丁巳冬11月、天照大神が宮中を離れ伊勢神宮に鎮座した直後の新嘗祭の夜、倭姫命は天照大神の託宣として

人ハ乃チ天下之神物ナリ。須ラク静謐ヲ掌ルベシ。心ハ乃チ神明之主タリ。心神ヲ傷ルコトナカレ。神垂ハ祈禱ヲ以テ先ト為シ、冥加ハ正直ヲ以テ本ト為ス。其ノ本誓ニ任リ。皆大道ヲ得シメバ、天下和順シテ。日月精明ナリ。風雨時ヲ以テ。国豊カニ民安カナリ。

云々と告げたそうです。ここに神道における重要な神と人の関係が読み取れるとともに、私たちが生きるべき指針があります。

 現在でこそ天照大神は宮中を離れ、伊勢の地で神嘗祭を執行しますが、ここにおける新嘗祭は天照大神が宮中を離れ伊勢の地に鎮座された直後のものであり、宮中の新嘗祭が伊勢の地で執行されたものと考えられます。そして先学の指摘によれば、伊勢神宮では、神嘗祭の夜、御巫内人が御琴を弾いて天照大神の託宣を賜る「御卜神事」が執行されますが、『宝基本記』における天照大神の託宣は、まさしくこの御卜神事の淵源とのことです。

 新嘗祭の夜、天照大神は「人の本性は神そのものである」「その本性を人は自ら不明としている」「清浄を極め、本性に戻れば天下安穏となる」という御教えを告げられました。私たちは新嘗祭を直前に迎え、自身の本性と神性を知り、それを不明としている汚濁罪障を退け、本性たる神性に至ることにより世界の平和を実現したいと考えます。

平成29年11月19日 埼玉県護国神社清掃奉仕(埼玉縣護國神社清掃奉仕の會)

 この日、埼玉縣護國神社清掃奉仕の會による埼玉県護国神社清掃奉仕活動に参加しました。

 参加者全員で正式参拝後、清掃奉仕活動を行いました。秋を迎え、境内には落ち葉が目立っていましたが、掃き掃除や玉砂利の整備などを奉仕しました。

 埼玉縣護國神社清掃奉仕の會による埼玉県護国神社清掃奉仕活動は、この日で10周年を迎へるとのことです。 清掃奉仕以外にも、みたま祭など埼玉県護国神社で行われるお祭りの準備なども奉仕しています。

 来月23日の天皇誕生日は、埼玉県護国神社では天長祭と餅つきが行われる予定です。

後を絶たない米兵犯罪と米兵犯罪の捜査・処罰・受刑に関する日米密約

 11月19日早朝、沖縄県那覇市の交差点でアメリカ軍兵士が運転するトラックと軽トラックが衝突した。軽トラックを運転していた男性は救急搬送され、その後、死亡が確認された。運転していたアメリカ軍兵士は飲酒運転であり、基準値の約3倍のアルコールが検出されたといわれている。

 先日は、うるま市女性殺害事件の元アメリカ軍兵士の被告の裁判がはじまるなど、アメリカ軍兵士の犯罪(米兵犯罪)が注目を集めている。こうした米兵犯罪は、日米地位協定と日米合同委員会による日米合意によって、捜査・処罰に大きな壁が存在している。例えば、公務中のアメリカ軍兵士の犯罪は日本の法律を適用することができず、日本の警察が逮捕できないなどとなっている。

 米兵犯罪に関する不条理の一例をあげたい。1957年、群馬県内の米軍演習場にてアメリカ軍兵士・ジラードによる日本人女性射殺事件が発生した。いわゆる「ジラード事件」である。事件はジラードによる誤射ではなく、ジラードが女性に声をかけた上で背後から発砲・殺害するという残忍な殺人事件であり、日米の外交問題に発展した他、両国内で政治問題となった。

ジラード事件を報じる当時の新聞(毎日新聞「昭和毎日」)

 事件はおよそジラードによる公務中の出来事とはいえず、日米行政協定(後の日米地位協定)に基づき日本側で刑事裁判が行われたが、ジラードの量刑は懲役3年・執行猶予4年という軽微なものでしかなかった。ここには当時の岸信介政権とアメリカ・アイゼンハワー政権の密約が存在する。

 犯行の悪質さもあり、事件が発生直後より大きな話題となったことはいうまでもない。世論は国内でのジラードの刑事裁判を求めたが、アメリカ側はこれに反発し、日米の外交問題にまで発展する。そして岸首相(外相兼任)は訪米し、ジラードの国内での刑事裁判と引き換えに、軽微な処分を密約したのであった。

 岸首相の思惑は、国内で刑事裁判を行わないと、世論を前にして自己の政権が危うくなるが、過度に対アメリカ強硬論を展開することは、国内の反アメリカ感情を刺激し、反基地運動を助長することになり、ひいては共産主義の脅威に繋がるというものであり、日米密約路線に舵をきったのである。

 他方、アメリカ側にも思惑が存在した。つまりジラード事件は刑事事件ではなく偶発的な事故であり、ジラードが日本で罪なく罰せられてしまうという世論が高まる一方で、この問題を放置すると対日関係を悪化させ、在日アメリカ軍基地の円滑な運用を困難にし、それは自由主義陣営を危うくし共産主義勢力を資するというものである。

 不条理や日米密約によるアメリカ軍兵士への特別待遇は、刑事事件における捜査・処罰だけに留まらない。公務外による犯罪で日本の警察により逮捕され、刑が確定したアメリカ軍兵士の日本の刑務所における処遇すら特別待遇が存在する。元アメリカ軍兵士受刑者は、横須賀刑務支所に収容されるが、そこでは日米地位協定・日米合同委員会による日米合意に基づき、食事・暖房・入浴・就寝時間など、日本人受刑者とは全く異なる特別待遇を受ける。

米兵受刑者と日本人受刑者の刑務所での献立の違い(「しんぶん赤旗」2008年5月17日)

 2006年における衆議院での政府への質問主意書とその答弁や国会質疑では、収容中のアメリカ軍兵士受刑者がステーキなど日本人受刑者とは異なる食事を摂取し、スチーム付きの居室が与えられ、日本人受刑者には週2回前後しか認められていない入浴も、シャワーなどを含めて毎日あるということが明らかとなっている。

 受刑者の人権尊重は当然であり、生活水準の向上も大切なことである。日本の行刑があまりに前近代的であり、受刑者の処遇改善は大切なことであるが、そこに日米の差があってはならない。こうしたアメリカ軍兵士への特別待遇が「何をしても平気」という雰囲気を醸成し、綱紀が弛緩し、つまるところ米兵犯罪の遠因となっていることが想像できる。

 日米地位協定・日米合同委員会による日米合意よると、米兵犯罪は公務中かどうかで捜査・処罰が大きくかわる。また「公務中」でなくとも日米の政治的取引により真っ当な捜査・処罰が行われなかった歴史があることはジラード事件が証明している。さらに受刑者処遇すら歪められ、日本人とアメリカ軍兵士の人権に差別が存在している。そして、そうしたアメリカ軍兵士の特別待遇の影で苦しむのは、何の罪もなく生きる市井の人々であることを忘れてはならない。