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6・12米朝首脳会談を終えてー安倍政権はこれまでの対北朝鮮外交を総括し、新たな外交方針を打ち立てよー

 本日12日日本時間10時、シンガポール・セントーサ島カペラ・ホテルにおいて米国トランプ大統領と北朝鮮金委員長が対面、歴史的な米朝首脳会談が開催された。両首脳は挨拶の後、しばらく2人きりで会談を行い、その後に外相などが加わった拡大会合やワーキング・ランチなどが開かれ、合意文書の署名とトランプ大統領の記者会見が行われた。両首脳は当日中にシンガポールを出発し帰国の途についた。

史上初の首脳会談を行うトランプ大統領と金委員長【毎日新聞2018.6.12より】

 昭和25年(1950)の朝鮮戦争以来、紆余曲折あったとはいえ米朝関係は長らく敵対関係にあった。平成8年(1994)の北朝鮮の核危機においては、当時の米国クリントン大統領が北朝鮮へのミサイル攻撃を真剣に検討するなど切迫した事態ともなった。現在も朝鮮戦争はあくまで「休戦」であり、戦争は終わっておらず、両国は戦争状態にある。

 核・ミサイル開発など軍備増強やテロなど危険な国家犯罪を繰り返した金日成主席・金正日委員長の死去後、北朝鮮の政権を掌握した金正恩委員長も核開発を強行し、ミサイル発射実験を繰り返した。こうした北朝鮮の軍備増強・軍事的挑発により、昨年末には米朝が一触即発の状態となり、日本でも北朝鮮危機という「国難突破」を大義名分とした解散総選挙が行われ、地上イージスなど米国製兵器の大量購入・配備が行われた。

 しかし、トランプ政権で外交を担当したティラーソン前国務長官は北朝鮮との対話を追及し、韓国・文在寅大統領も厳しい情勢の中で平昌オリンピックなどを利用しつつ南北対話の糸口を探った。こうした対話の追及が板門店で行われた今年4月27日の歴史的な南北首脳会談へつながり、さらに史上初の米朝首脳会談の実現に至ったことはいうまでもない。

 今回の米朝首脳会談によって北朝鮮の体制保証と朝鮮半島の非核化が合意された。その上で、①米朝の両国民が平和と繁栄を望んでいることに従って、新しい米朝関係を構築する、②朝鮮半島に永続的で安定的な平和体制を構築するためともに努力する、③北朝鮮が朝鮮半島を完全に非核化するために取り組むとした、3月27日の板門店宣言を再確認する、④米朝はすでに身元確認されたものを含め、戦争捕虜や行方不明兵の遺骨の回収に尽力する、の4点が確認され、トランプ大統領は非核化に向けた「プロセスの始まり」を明言し、さらに再度の米朝首脳会談実施にも触れた。

昨年9月、北朝鮮による核実験・ミサイル発射に関連し、朝鮮総連本部周辺にて抗議する花瑛塾行動隊

 花瑛塾はけして現在の北朝鮮の体制を是とするものではない。北朝鮮による度重なる安保理決議違反の核実験やミサイル発射、あるいは国内における惨たらしい政敵の粛清や国民の窮乏や人権侵害などは許されるものではなく、また日本人拉致事件という重大な国家犯罪は絶対にうやむやにすることはできない。

 一方で、北朝鮮と一切の対話を拒み、軍事的・外交的威嚇や圧力を続けたとしても、何も得るものはない。米国オバマ政権は「戦略的忍耐」を掲げ対話を拒んだが、それは北朝鮮の核・ミサイル開発を阻止することはできなかった。トランプ大統領は当初、北朝鮮の軍事的挑発にのり、軍用機や航空母艦を朝鮮半島に差し向けるなどしたが、それは「軍事対軍事」の緊張関係を生むだけのものであり、最悪の事態を誘発するものでしかなかった。

 花瑛塾は米朝関係が緊張し、東アジアが緊迫した情勢となった昨年後半より、重ねて北朝鮮に軍事的挑発の自制を求め、国連決議違反を戒めたが、同時に米国にあくまで対話を追及し、北朝鮮への対抗的な軍事的・外交的威嚇をただちに中止し、「軍事対軍事」の構図を絶対に避けるよう求めた。そして安倍政権にも危険かつ無意味な対北朝鮮強硬外交をただちに取り止め、米朝対話の架け橋となるよう北朝鮮との対話の模索を求めた。

 そうした花瑛塾の行動は、対北朝鮮強硬論が吹き荒れた昨年の時点では逆風も強かったが、いまや国際情勢は上述のように対話が追及され、昨年では考えられないような雰囲気となり、歴史的な南北首脳会談・米朝首脳会談が行われ、少なくとも一時の緊張状態を避けることができた。さらに今回の米朝首脳会談によって、北朝鮮の非核化は第一歩を踏み出したのであり、朝鮮戦争の終結、朝鮮半島そして東アジアに平和が到来する大きなきっかけとなった。約70年にも渡り戦争状態にあった米朝であり、そう簡単には非核化や戦争終結が実現されることはないであろう。しかし、それは平和の到来を諦める理由にはならず、その不可能を示すものではない。

 そして安倍首相は、北朝鮮の「脅威」を煽りに煽り、「国難」「危機」を言い募り、衆議院の解散までやってのけた。そして世界各国に北朝鮮との断交をすすめ、「対話は必要ない」とまで国連で演説し、「最大限の圧力」なる言葉を繰り返す危険かつ無意味な対北朝鮮外交を展開し続けたのである。

 結果として、各国の外交当局による対話の努力が実り、対話路線が進展すると、安倍首相は「圧力が効いた」「私が司令塔」などと図々しくも放言し、北朝鮮との外交交渉に乗り遅れた事実に向き合わず、トランプ大統領に拉致事件を北朝鮮へ提起するよう哀願するような状態に陥っている。

昨年9月「必要なのは対話ではない」と各国に向けて国連で演説する安倍【朝日新聞2017.9.21より】

 安倍首相は、自身が行ってきたこの1年の対北朝鮮外交がはたして妥当であったのか、いまこそ総括するべきである。安倍首相は現在の北朝鮮を取り巻く国際情勢を予期した上で、それが実現するために「圧力」を言い募り、「対話は必要ない」とまで言い放ったのだろうか。それは絶対に否である。まさしく場当たり的な外交であり、北朝鮮の「脅威」を煽ることにより国内的な政治的求心力を高め、国民の目を海外に逸らそうとしていたとしか考えられない。北朝鮮の「脅威」は本当に存在したのか、「圧力」に意味はあったのか、日本が各国の北朝鮮外交を主導したのか、現在の北朝鮮外交にどのような失点をもたらしたのか、よく振り返るべきである。

 そして日朝間の懸案事項である日本人拉致事件の解決のため、安倍政権は日朝首脳会談を行い、被害者の帰国に向けて努力をするべきである。「圧力」に意味はない。4年前のストックホルム合意とこれに基づく北朝鮮の再調査を受け入れなかったことについて、安倍首相は真摯な説明をするべきである。さらに小泉政権時、拉致事件被害者の北朝鮮への帰国を拒否したことについても、どのような外交的判断があり、その結果対北朝鮮外交にどのような影響を与えたのかについても、疑惑に答える必要がある。そもそも「拉致を使ってのし上がった男」との評価がある安倍首相は、本気で拉致事件の解決に取り組んだことがあるのか、自身の言葉で思いを述べるべきだ。

 安倍首相の危険かつ無意味な対北朝鮮外交により日本の国際的な信用は大きく毀損し、対北朝鮮外交は遅れを取り、拉致被害者の帰国は日一日と難しくなっているが、悔いている暇はない。強気な言葉を無意味に叫ぶことによって外交に失敗したのであれば、いまこそ北朝鮮と向き合い、事態打開のために虚心坦懐に話し合うべきだ。安倍首相はこれまでの外交の失敗を総括し、その反省の中から新たな外交方針を打ち立て、取りえる次の一手を速やかにうつべきである。