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【広島・長崎原爆投下76年】「核なき世界」の実現と被爆者、戦争被害者の救済に全力を

広島、長崎原爆投下76年

 広島、長崎への原爆投下より76年を迎える。

 昭和20年8月6日、米国は広島に原爆を投下し、約15万人もの人々の命を奪った。そして9日には長崎にも原爆を投下し、約7万3千人もの人々の命を奪った。奇跡的にも生き延びた人々や原爆投下直後より救護等で市内に入域した人々は、その後長期間にわたり原爆症といわれる放射線障害に苦しめられた。

 また忘れてはならないことは、原爆により被害をうけたのは日本人ばかりではないということだ。勤労動員など様々な理由で広島に連れてこられていた朝鮮半島出身者や、捕虜として収容されていた米兵なども原爆の被害をうけている。

 かかる米国の戦争犯罪は到底許されず、厳しく糾弾されなければならない。

日本の使命としての核廃絶

 しかし今を生きる私たちにとって重要なことは、米国の非道をただただ追求し、謝罪要求に終始することのみではないはずだ。

原爆が投下地点の真下にあった広島県産業奨励館跡(原爆ドーム):Wikipedia「原爆ドーム」

 何よりも大切なことは、何の咎もなく核の火に焼かれた犠牲者の無念を晴らし、苦しむ御霊をお慰めするため、核の戦争被爆国である日本と戦争使用国であり今なお大量保有国である米国という日米両国こそが協調連携し、「核なき日本」「核なき米国」「核なき世界」を実現するということ、二度とこのような惨禍を繰り返さないため具体的に行動することである。

 それはまた、私たち自身が核の恐怖から逃れ、平和で豊かな世界を生きるために求められていることでもあろう。

 先の大戦の終戦の詔書には

敵は新に残虐なる爆弾を使用して、頻に無辜を殺傷し、惨害の及ぶ所、真に測るべからざるに至る。而も尚交戦を継続せむか、終に我が民族の滅亡を招来するのみならず、延て人類の文明をも破却すべし。くむは、朕何をてか億兆の赤子し、皇祖皇宗神霊せむや。

とある。

 戦後神社界を代表する言論人である葦津珍彦は、この終戦の詔書をひきつつ、核兵器の残虐性と軍事情勢の変化から日本核武装論へ疑問を呈し、日本の核なき防衛と世界的な核廃絶を訴え、日本が世界的な核廃絶の先導役になるべきだと論じている。そして、それは非核保有国の共感を結集させるものであり、日本の国家的使命、世界史的使命であるとも述べている。

 葦津氏はまた

日本が将来に於て、万一にも自ら原爆を使用したならば終戦の詔書は、その道義的権威を失ひ、民族の存亡を賭した悲史の教訓はその意味を失はねばならない。終戦の詔書に明示せられし原爆拒否の道義的宣言は、断じて弱者の悲鳴ではない。

目的のために手段を誤ってはならない。終戦の大詔は、この道義の大原則を明示せられてゐる。犯罪的手段を選ぶほどならば、目的の放棄も亦やむを得ぬ、この悲痛なる道念あってこそ、地上に道義は保たれるのである。

として、日本の核武装を否定している。終戦の詔書にも反する日本核武装論などあってはならず、むしろ積極的に「核なき日本」「核なき米国」「核なき世界」の実現のために努力することこそ、本来的な日本の立場であることを確認したい。

核廃絶と被爆者、戦争被害者の救済

 そうであればこそ、日本は核廃絶に向けたあらゆる行動をとるべきである。

長崎平和祈念式典:毎日新聞2020.8.9

 しかし日本政府が現にやっていることは、核廃絶の動きに真っ向から反し、米国の核保有を擁護し続けるものである。

 例えば政府は平成28年、国連での核兵器禁止条約をめぐる交渉開始決議に反対し、翌年の核兵器禁止条約交渉会議も不参加とした。それでも国連で採択された核兵器禁止条約は世界の国々が批准し今年初頭に発効、それにより核兵器はついに違法な兵器となったわけだが、こうした各国の核廃絶に向けた具体的な行動に対し、政府は背を向けるばかりか、足を引っ張っている。

 また国内的には、被爆者はじめ犠牲者も含む戦争被害者の救済に後ろ向きな政府の姿勢も問われなければならない。

 政府はこれまで広島原爆後の「黒い雨」の範囲や雨以外での被爆の可能性をきわめて限定的にとらえ、多くの被爆者への原爆手帳の交付を拒んできた。こうした政府の対応をめぐる「黒い雨」訴訟は地裁、高裁での原告勝利判決を経て最近になりようやく和解がなされたが、訴訟は長年にわたり、少なくない原告が訴訟の途中で命を落としている。

 原爆以外でも、東京大空襲はじめ米国による空襲の被害をうけた民間人空襲被害者への救済は、戦後何一つなされていない。今年の通常国会で空襲被害者救済法の制定が目指されたが、政府と自民党の一部の反発をうけ、法案提出にも至らなかった。

 核廃絶や平和の取り組みとともに、被爆者や戦争被害者へのあまりに冷酷な政府の姿勢も見直されるべきである。

 あらためて日米が手を携えて広島、長崎に向き合い、「核なき日本」「核なき米国」「核なき世界」の実現を目指すよう日米両政府に訴えるとともに、特に日本政府には被爆者や戦争被害者に一刻も早く十分な救済を講じるよう求める。

【広島・長崎原爆投下75年】日米が連携し「核なき世界」を実現しよう─戦後神社界の反核・原水爆禁止の思想に学ぶ─