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【沖縄戦76年】2021沖縄シンポジウム「沖縄とともに─慰霊の日をむかえて─」(東京弁護士会)

 オンライン開催された2021沖縄シンポジウム「沖縄とともに─慰霊の日をむかえて─」(主催、東京弁護士会)に参加し、第一部の講演「沖縄戦を忘れない─沖縄戦とPTSD─」(講師、蟻塚亮二さん)、および第二部の講演「沖縄は今なお本土の捨て石か─辺野古新基地建設の予定地の地質・活断層について─」(講師、立石雅昭さん)を聴講しました。

 このシンポジウムでは例年、東京の弁護士会館にて沖縄戦や基地建設をめぐる講演や写真展示などが開催されています。昨年はコロナの影響で中止となりましたが、今年はオンラインでの開催となり、沖縄戦とPTSDの問題に詳しい精神科医の蟻塚さん、また地質学・堆積学を専門的に研究されている新潟大学名誉教授の立石さんより、それぞれお話しを伺いました。

 特に蟻塚さんは、戦後ほとんど把握されてこなかった沖縄戦の壮絶な体験を要因とする戦争トラウマとPTSD、特に晩発性のPTSDに精神科医として向き合い、苦しむ方々の治療やケアにつとめるとともに、シンポジウムなどで症例の報告や理解促進とケアのためにできることなどを訴えています。

 沖縄戦においては、多くの米兵が涕泣や汚物の垂れ流し、機関銃の乱射といった異常行動を伴う戦争神経症を発症させましたが、言うまでもなく少なくない数の日本兵も戦争神経症とみられる異常行動を起こしており、戦後も沖縄戦を経験した沖縄住民が戦争神経症や戦争トラウマによるPTSDに苦しみ続けました。

 しかし、そうした苦しみに対する理解や医学的解明は進まず、戦争神経症に悩む人たちはその異常行動から「戦争幽霊」「兵隊幽霊」などといわれたり、戦争トラウマによるPTSDについては「気持ちが弱いからだ」などとして片付けられたりしていました。

 特に戦争トラウマによる晩発性のPTSDは、その症状や発症数の多さという点で非常に深刻なものがあります。晩発性ですからある程度歳をとった沖縄の住民が、例えば親族の死をきっかけに沖縄戦におけるトラウマが蘇り、不眠が続いたり体調を崩したり、あるいは戦争犠牲者の遺体を思い出して肉が食べられなくなったり、遺体の匂いを感じるようになったりといった症例を訴えることが多々あったそうです。

 精神科医として沖縄に赴任していた蟻塚氏は、そうした住民と接する中で海外の軍隊におけるPTSDの事例などとも比較しつつ、戦争トラウマとPTSDの問題に向き合い、治療やケアをする一方で、この問題を広く発信してきましたが、このたびのオンラインでのシンポジウムでもその実例を紹介いただきながら戦争トラウマとPTSDの問題、そしてこれをどう乗り越えていくかなどお話し下さいました。

沖縄戦のPTSDについてお話しされる蟻塚医師:琉球新報2014.12.17

令和元年6月22日 「沖縄とともに─慰霊の日をむかえて─」シンポジウム(東京弁護士会)