菅義偉首相の総裁選不出馬、事実上の退陣表明もあり混迷の度合いを深めていた自民党総裁選の投開票が行われ、岸田文雄新総裁が選出されました。
この自民党総裁選は、安倍晋三前首相、そして菅首相の失政悪政の連続によって追い込まれていた自民党が総選挙を前に、有権者に対して「自民党はかわった」という幻想を見せるためだけの巨大な政治ショーであり、全くのイリュージョンでしかありません。
花瑛塾は、総裁選後に自民党本部で行なわれる新総裁による記者会見に合わせ、安倍、菅政権の「居抜き政権」でしかない岸田新総裁と新政権に何らの期待なしとして、来たるべき総選挙での岸田新総裁の落選、政権交代の実現をと自民党本部前で訴えました。
そもそも岸田新総裁は、安倍政権において長期間にわたり外務大臣を務め、特に安保法制国会では、担当大臣の一人として安保関連法の必要性を強弁し続けた人物です。岸田新総裁は、その後も自民党政調会長として党の政策責任者を務めてきたのであり、これまでの自民党政治の主柱の一人です。
そうした人物が新総裁となって自民党がかわるなどということはありえません。事実、岸田新総裁は、総裁選中、森友事件の再調査についても言を左右にして態度をはっきりさせず、自身の地元広島で起きた河井夫妻による買収事件についても曖昧な態度に終始しています。これでは安倍、菅政権と何が違うというのでしょうか。
そればかりか岸田新総裁は、辺野古新基地建設を進めると明言し、沖縄戦の犠牲者の遺骨が含まれている可能性のある沖縄南部の土砂の辺野古埋め立てへの使用についての質問に答えることもありませんでした。また異常な中国脅威論を煽り立て防衛予算の拡大など軍拡を主張しており、沖縄に負担を押しつけ危険な対外硬論を唱えた安倍政権と全く同様の政策を打ち出しています。広島出身ながら核禁条約にも否定的で、米国の核政策を擁護し、世界的な核軍縮に取り組む意思も見えません。
岸田新総裁は、自民党のなかでも保守本流といわれる穏健派、ハト派の派閥である宏池会の会長でもあります。総裁選でも宏池会創設者の池田勇人元首相による有名な所得倍増計画や、宏池会の元会長の大平正芳元首相の田園都市構想を取り入れ、それらを現代的にアレンジした政策を打ち出していますが、池田元首相も大平元首相もそれぞれ内政ばかりではなく平和外交を推し進め、外交での多大な成果をあげました。歴史教科書問題、慰安婦問題で重要な役割を担い、周辺諸国との関係改善を進めた宮沢喜一元首相も宏池会の会長です。
安倍政権同様、岸田新総裁が危険な対外硬論を推し進め、平和外交を放棄し、周辺諸国との関係を悪化させていくのならば、岸田新総裁は宏池会の伝統に泥を塗ることになると同時に、自民党のなかでもいくらかでもましな部分、最後の良心とでもいうべきものすら今の自民党にはなく、自民党は安倍、菅的なものしか息をすることが許されない党なのだということがはっきりとしてきました。
一方で、岸田新総裁が何よりもまず集中してやるべきコロナ対策については、具体的で明確な政策、方針が見えてきません。安倍、菅政権は、ともにコロナ対策に失敗し、感染拡大を招きました。二代続けて政権がコロナ対策に失敗して追い込まれ、かつ今もってコロナの終息が見えない現状において、コロナ対策が不明瞭であるということは、岸田新総裁も安倍、菅政権のコロナ対策の失敗を繰り返し、その点でも安倍、菅政権を継承していくことになるでしょう。
岸田新総裁は、自民党役員について、1期1年連続3期までという制限を設けると発言するなど、総裁選で党改革を訴えていましたが、総裁選での岸田陣営には、麻生太郎財務相や甘利明税調会長をはじめとするキングメーカー気取りの政治家が跳梁跋扈し暗躍しており、高市早苗候補を応援していたはずの安倍前首相も巧妙に岸田新総裁誕生を視野に入れて動いていたといわれています。
岸田新総裁になっても、結局のところ自民党はこれまでの派閥政治、長老支配、キングメーカー気取りのボスたちによる二重権力体制が維持されるのであり、つまるところ岸田新総裁と新政権は、安倍、菅政権の「居抜き政権」「傀儡政権」でしかなく、表看板はかわってもその中身は何もかわりません。人事は水物であり、今後どうなるかわかりませんが、すでに麻生財務相に近い甘利税調会長や安倍元首相と近い萩生田光一文科相の幹事長就任が取り沙汰されており、早くも「居抜き政権」「傀儡政権」の本領を発揮しています。
岸田新総裁は、総裁に選出された直後のスピーチで「私たちは、生まれ変わった自民党をしっかりと国民の皆さんに示し、支持を訴えていく」と述べましたが、自民党は生まれ変わってなどいないのです。この点をしっかりと見抜いていく必要があります。
他方、岸田新総裁は、人の話をよく聞くことが自身の長所と述べています。それは確かに素晴らしい長所ですが、人の話を聞き過ぎて、そこにつけこまれ、しがらみでがんじがらめにされ、結局は自分で何もできない操り人形の傀儡となり、あるいは判断不能の立ち往生に追い込まれ、遠からず政権を投げ出すことは目に見えています。
岸田新総裁による新政権は短命で終わる。いや終わらせなければなりません。一刻も早い政権交代を実現しましょう。