第1回 私が知った韓国・元日本軍「慰安婦」の女性たち―「慰安婦」問題が問う日本の民族主義― 平成30年6月25日
講師:山口祐二郎さん(憂国我道会々長、フリーライター)
日本軍が関与し設立された慰安所で「慰安婦」とされた多くの女性たち。日本政府は1993年に「河野談話」を発表し、2015年に「日韓合意」を結び「お詫びと反省」を表明しました。しかし、日本国内ではいまだに「慰安婦」問題が「強制連行の有無」に終始し、元「慰安婦」の女性たちが何を訴え、悲しく辛い人生において何を求めているのか、充分に理解されていません。
講師は元「慰安婦」の女性たちとも面会し、心の傷が和らぎ癒えるよう名誉と尊厳の回復、日韓友好のために動いています。この問題に関心を持ったきっかけや現在の元「慰安婦」の女性たちの心境や境遇、「慰安婦」問題の現状などを伺いたいと思います。
第2回 自衛隊沖縄配備のこれまでとこれから―愛国者は「沖縄と自衛隊」をどう考えるべきか― 平成30年7月30日
講師:木川智(花瑛塾々長)
平成25年(2013)、政府は「新防衛大綱」において南西諸島(鹿児島・奄美諸島~沖縄・先島諸島)における防衛力の強化を打ち出し、ミサイル部隊や警備部隊など陸上自衛隊各部隊の配備をすすめ、さらに水陸機動団(「日本版海兵隊」)の創設と米軍施設「キャンプ・ハンセン」(沖縄本島)への配備を構想している。
一方、こうしたいわゆる自衛隊「南西シフト」に対する地域住民の反発・警戒は強い。日本軍の突如とした沖縄駐屯とこれによる悲惨な日米の戦闘となった沖縄戦を経験している沖縄としては、当然の反発であろう。さらに在日米軍の過重な基地負担を押しつけられてきた沖縄において、自衛隊といえども新たな基地負担が発生するわけであり、理解を得るのは難しいともいえる。そもそも「南西シフト」が想定する「島嶼部有事」に現実味があるのか、疑問の声もある。
同時に、昭和47年(1972)の沖縄「本土復帰」以降、自衛隊は沖縄に駐屯し、防衛の任を担ってきた。以来、自衛隊が地域社会と共生してきたことは事実であり、地震や台風など災害救助の任務を黙々と務める自衛隊に国民的な信頼・期待が高いことも事実である。そうしたなかでの自衛隊「南西シフト」と沖縄から噴き出る自衛隊への「不信」。さらに最近明るみとなったイラクや南スーダンでの自衛隊日報隠ぺい問題が、自衛隊への「不信」を倍加させている。国を愛し、国の守りの重要性を訴える者として、そして沖縄の苦しみや沖縄の悲しみを我が思いとする者として、この状況は憂慮せざるを得ない。
戦後の神道界を代表する言論人・葦津珍彦は、自衛隊を「国民の連帯」「国家への信頼」の確保のために必要とするが、その立場から自衛隊「南西シフト」や「沖縄と自衛隊」をどう捉えるべきか、沖縄「本土復帰」以降の自衛隊沖縄配備の歴史なども踏まえつつ考えたい。
第3回 沖縄はうちなんちゅのもの─本土からやまとんちゅが出来ること─ 平成31年2月1日
講師:仲村之菊(花瑛塾副長)
沖縄は今年で沖縄戦と米軍による占領から74年、沖縄施政権返還から47年、痛ましい少女暴行事件を契機とする沖縄の基地負担を抜本的に見直す日米合意「SACO合意」から23年の年月を迎えようとしている。しかし、いまなおヘリパッド建設など米軍基地の機能強化や辺野古での新基地建設が行われ、米軍機事故や軍属による女性殺害事件など米軍関係の事件事故が後を絶たない。
本土の「戦後」とは全く異なる「もう一つの戦後」という時間が流れる沖縄現地において、講師は基地問題を中心に2年間に渡り活動を続けてきたが、そこで感じることは、米軍ではなくいまや日本政府こそが沖縄に「銃剣とブルドーザー」で襲いかかる「脅威」そのものだと感じるようになったと話す。仮想敵国の「脅威」から沖縄を防衛するためと称して米軍に基地を提供する日本政府こそ沖縄にとっての「脅威」とは、皮肉ではすまされない事態である。
本土の「やまとんちゅ」が沖縄の「うちなんちゅ」に対して出来ること、するべきことについて講師の話を聞きたい。
米海兵隊演習場「北部訓練場」で語りがけを行なう講師【朝日新聞2018.12.13】
第4回 やんばる地区の米軍基地に関する環境問題 平成31年3月22日
講師:アキノ隊員(宮城秋乃:チョウ類研究者)
2016年12月、沖縄島北部やんばるの森に立地する米海兵隊演習場「北部訓練場」の約4,000ヘクタールが、6箇所のヘリパッド建設と引き換えに返還された。沖縄防衛局は演習場返還にあたり、返還地に残された米軍の廃棄物や土壌汚染の撤去・除去を行ったと説明し、返還地の一部は国立公園ともなったが、講師は実際に返還地で未使用弾や照明弾、レーション(携行糧食)のゴミなどを大量に発見し、報道でも取り上げられている。
今回のセミナーでは、北部訓練場返還地の現状とやんばる国立公園化の問題点、あるいは北部訓練場周辺の集落である高江・安波や北部訓練場返還地における米軍機の飛行状況、そして高江・安波で講師が発見した希少動物や米軍ヘリパッド建設や米軍機の飛行が野生動物や生態系に与えた影響の具体例などについて、映像とともに報告いただく。
第5回 沖縄が示した民意をどう受け止めるか─沖縄県知事選挙・県民投票・国政選挙を振り返って─ 令和元年5月17日
講師:渡瀬夏彦(ノンフィクションライター)
2月の辺野古県民投票では、埋め立て「反対」の圧倒的な民意が示された。またデニー知事や故翁長前知事が当選した県知事選挙や「オール沖縄」による過去の衆参国政選挙など、沖縄では新基地建設反対・基地負担軽減を求める民意が繰り返し示されている。しかし、それでも政府は新基地建設を強行し、4月の衆院沖縄3区補選では基地問題が争点になるなど、再び沖縄の「民意」が問われている。「それでいいのか」─問われているのは沖縄の民意を足蹴にする「本土」の民意なのではないのだろうか。
そこで県知事選挙や国政選挙、県民投票を間近で取材し、関わってきた講師をお招きし、各選挙のエピソードや沖縄のリアルな民意を伺いたい。また最近の沖縄での「開かれた候補者選考」を求める動きも解説いただく。
第6回 ネトウヨはどこから来て、どこへ行くのか─右でも左でもない“ネトウヨ”という空虚さの漂流─ 令和元年10月25日
講師:中村友哉(「月刊日本」副編集長)
SNSやネット上に溢れかえる民族差別や憎悪表現、排外主 義的言説、歴史的事実を無視した極端な過去の肯定など歴史修 正主義の言論は、今やこの国の公共空間にも充満し、時に現実 の政治まで動かしている。
こうした言論を繰り出すネトウヨ(ネット右翼)については、 これまで多くの人が取り上げ検討されてきたが、つまるところ 何なのか、今一つはっきりしない。移民排斥など世界的な極右 の台頭の文脈で読み取るべきか、日本的な保守・右翼の思想を 視点とするべきか、あるいはもっと異質な精神態様なのか。
良識的な保守系政治家を中心にインタビューを重ねるととも に、過去には故翁長雄志元沖縄県知事を左翼と見なすある種の ネトウヨ的な言説を批判した「月刊日本」中村友哉副編集長よ り、ネトウヨのこれまでとこれからを伺いたい。
第7回 沖縄「北部訓練場」返還地の現状─返還されてなお沖縄を苦しめる米軍基地の環境問題─ 令和元年12月20日
講師:アキノ隊員(宮城秋乃)
2016年12月、沖縄島北部の「やんばるの森」に立地する米海兵隊演習場「北部訓練場」の約4,000ヘクタールが、6箇所のヘリパッド建設と引き換えに返還された。
しかし、北部訓練場返還地では、米軍が捨てたと見られる空包や空薬きょう、ドラム缶など多数の廃棄物が散乱し、米軍ヘリはかわらず上空を飛び交い、今なお付近住民を苦しめている。
また、たびたびやんばるの森に入り、返還地の状況を確認しているアキノ隊員は、返還地で米軍の未使用弾や捨てて間もないと思われる野戦食を発見し、米軍ヘリが離着陸する瞬間も撮影しており、米軍は今も返還地に進入し、何らかの訓練を行っている可能性が浮上している。
花瑛塾はすでに安倍総理大臣に北部訓練場返還地での米軍の行動の調査を要請するとともに、河野防衛大臣にも同様の調査を要請する予定であるが、あらためてアキノ隊員が撮影した映像とともに、北部訓練場返還地の現状を報告いただく。