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名古屋市での「私たちの『表現の不自由展・その後』」に対するテロを許さない

 名古屋市の市施設「市民ギャラリー栄」で開催中の「私たちの『表現の不自由展・その後』」(名古屋展)をめぐり7月8日、ギャラリーに宛てた郵便物をギャラリー職員が開封したところ、同封されていた爆竹が爆発するという事件が発生した。

テロに見舞われた名古屋展の会場:東海テレビ2021.7.8

 郵便物には爆竹の他、名古屋展の中止を求める内容を記した紙片も入っていたとの情報もあり、事件が名古屋展を狙った“テロ”であることは明白である。

 事件をうけ名古屋市は、名古屋展最終日である11日までのギャラリーの休館を決めた。これにより名古屋展はこの日をもって事実上の閉幕、中止に追い込まれた。

 ギャラリーを一時休館し安全を確認することは当然であるが、被害状況や規模などから考えて、はたして8日から11日まで数日間にわたって休館する必要があるのかは疑問である。施設内に危険物などがないか確認し、警備体制を増強するなど相応の措置をとれば、再開可能だったはずだ。

 公共施設の利用の規制について、最高裁は「明らかな差し迫った危険の発生が、客観的な事実に照らして具体的に予見される場合でなければならない」と厳格な判断をしている。テロ行為直後は確かにそうした危険な状況であったといえるだろうが、その後もその翌日も翌々日も、警備体制を増強するなどしてもなお「明らかな差し迫った危険の発生が、客観的な事実に照らして具体的に予見される」といえるのだろうか。

事件後に名古屋展会場を捜査する警察:メーテレ2021.7.8

 憎むべきは卑劣なテロ犯人であるが、名古屋展の開催期間を狙い定めたかのように休館にする名古屋市の対応は、あたかもテロに乗じて名古屋展を中止にさせたかのようであり、はなはだ不審である。

 本当に安全確認のため11日まで休館する必要があるというのならば、12日以降に展示を再開できるよう名古屋市として対応すればいい。あるいは11日までの間、他に展示できる施設を用意したり、斡旋するなどの代替措置もとりえたはずだ。

 テロを実行することなどは絶対に許されない。またテロに屈することもあってはならない。そしていうまでもなく、テロを利用することもあってはならない。まして政治の側が、である。

 名古屋展で展示されている平和の少女像は、戦時性暴力の問題を訴える作品であるが、2年前のあいちトリエンナーレに続き、再びこの少女像が暴力にさらされてしまったのは、あまりに残念である。いたいけな少女像の顔を見れば、何とか最後まで展示をし、政治と暴力からこの少女像を守ってあげられないものかと慚愧に堪えない。

 ともあれ気に入らない表現がテロにより平然と圧殺され、さらには政治がそうした事態を利用するような社会の「その後」の恐ろしさについて、私たちはあらためて考え、そして警戒していく必要がある。

 いうまでもなく私たちは表現の不自由展・その後の一部作品について受け入れ難いものがある。しかし、それとこれとは別だ。名古屋展に対するテロを許さない。

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